横浜弁護士会新聞

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1999年7月号(3)

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「子どもはモンスターじゃないよ!」子どもの日記念講演会が開催
 五月八日(土)午後二時より、「子どもの日記念講演会」(日弁連・横浜弁護士会主催)が、横浜弁護士会館五階ホールにて開催された。
 今年で九回目を迎えた同講演会だが、今回は少年法改正問題を踏まえ、藤沢市立鵠沼小学校教員の名取弘文さんをお招きし、「子ども百面相・名取先生と子ども達自身が語る」のテーマで、子どもたちが本当に「危険」なのか、を考える会となった。
 水地啓子当会副会長による開会挨拶の後、前半は名取さんの講演で、教育現場での経験を中心に、教室の後ろで授業を聞かず注意をするとトイレに隠れてしまう子どもの生活ぶりなどが紹介された。そして、今の学校は荒れていると言われるが子どもたちが学校で型にはめられていくことに問題がある、今の子どもたちに対する悪口は外れている、子どもたちは好き嫌いや勉強をするしないを含めみんな色んな事情があり、何も子どもたちを追いつめることはない、といったお話であった。
 後半は、名取さんの元教え子や飛び入りなど一三人の子どもたちに会場前方に座ってもらい、来場者も参加しての名取さんの司会によるトークとなった。「今まで一番不愉快だったこと」というテーマには、「小二の時、夏休み読書コンクール用に書いた感想文を、先生が書き直して出した。」「高校の野球部で、動作について知識もない監督から間違った指導を受けた。」などの話しがあった。また、歩きタバコ、万引きなどが良いか悪いかのQアンドAでは、概ね子どもたちと会場で不一致はなかった。これから何をしたいかというテーマでは、「自分は中学高校時代色々やってきましたが、今中学高校でなやんでいる子と一緒になって、それを考えてあげたい。」との発言もあった。
 名取さんは、学級崩壊といわれるが、それは子どもたちの本当の姿を見ていないのではないか、学校で子どもたちに積もっている底なしの閉塞感を理解し、自分だけが辛いのじゃない、夢を持てば乗り越えられることを分かって欲しい、と締めくくった。
 最後に森和雄当委員会委員長よりの、今回の講演会のサブタイトルにもある「子どもはモンスターじゃないよ!」のメッセージを、荒れる少年やキレる少年の存在ばかりを強調する少年法改正問題についての議論の中でもよく考えてもらいたい、色々な子どもがいることを分かってもらいたい、という閉会挨拶で講演会は終了した。
 例年の「講演会」とは趣向を変え、実際に子どもたちと現場にいる名取さんと子どもたち自身の話に触れる会であったが、七〇人近い来場者を迎え、現実の子どもたちの実際の姿に触れることで、少年法改正問題を考える上での一つの重要な材料になったのではないかと思う。
 なお、当日はあわせて、午後一時から四時まで、「子どもの人権電話無料相談」も催され、当委員会の弁護士が電話で相談に応対した。(少年問題委員会委員 阿部 雅彦)

シリーズ司法改革その1
活発な会内論議を
副会長 星野 秀紀 
 司法改革が直面する課題となっています。市民のための司法を実現することが目的です。同じ司法改革といっても自民党・財界の要求する司法改革は規制緩和の事後救済機関としての司法の充実を言っているようです。これに対して日弁連の求める司法改革は事後救済的司法の充実だけではなく、これに加えて基本的人権の擁護・法の支配を貫徹させるための司法の充実を言うものと理解しています。
 市民のための司法改革実現に立ち向かう壁は厚いものがあります。司法改革の名の下に、行政・大企業支配の安易な事後的正当化システムに変質させられようとしているのではないか、法曹一元はできたとしても形式的なものとなり、陳腐化されてしまうのではないか、結局は弁護士人口の増大だけが行われ、弁護士自治を奪われる結果になるだけではないのか。
 しかし一方、司法改革は市民から弁護士、弁護士会に突きつけられた現実的課題でもあります。九九年春の当会会報五三号に掲載された座談会を読まれたでしょうか。司法・弁護士・弁護士会の現状に対する市民の不満は多く、これを放置することは許されません。
 内閣に設置される「司法制度改革審議会」には積極的に対応して行くべきだろうと考えます。またそうせざるをえないという側面もあるのが実情でしょう。日弁連がこれに後ろ向きに取り組むときには、世間から取り残され、それこそ基本的人権の擁護・法の支配を貫徹させる司法改革など実現はおぼつかないものとなってしまうと思います。
 私たちは課題に直面しています。とりわけ弁護士人口問題、法律事務の独占問題、法曹養成制度問題はすでに突きつけられている課題です。この課題に対して私たち弁護士、弁護士会が議論をリードできてこそ、私たちが求める法曹一元、司法予算の拡大と裁判官検察官の大幅増員、陪・参審制度、法律扶助制度の抜本的改革、国費による被疑者弁護制度、行政訴訟手続きの改善などが実現できるのではないでしょうか。
 今期岡本執行部は司法改革を中心課題としています。このための具体的行動としてはまず、先般常議員会の承認を得て「司法制度改革審議会対策特別委員会」を設置しました。関連委員会の協議を行いつつ、会内合意の形成と速やかなる意見集約を図っていきたいと思います。
 また本年度の県民集会は司法改革をテーマに開催したいと考えています。重いテーマであり県民集会にふさわしいかとの議論もありましたが、市民と弁護士会の対話の機会にもしたいと思います。
 更にこの横浜弁護士会新聞の紙面を借りて、司法改革をテーマにする連続企画を行う予定です。
 新聞紙上の連続企画は、テーマを絞って、緊急の課題から始め、対立することが予想される意見の座談会か、紙上討論のような形式にしたいと考えています。各会員の意見発表の場にもできればと思っていますので、どしどし意見を寄せられるようお願いします。
 この三本柱の活動を中心として当会における司法改革実現のための議論を盛り上げ、会内合意の形成と速やかなる意見集約の機会とできたらと期待しています。
 乞うご期待。

司法制度改革審議会対策特別委員会を設置
副議長箕山 洋二 
 第三回常議員会は出席者二四名を得て開催された。
第1号乃至第3号議案
 当会・日弁連・その他委員会の委員の選任及び推薦の人事案件であった。前回同様、人事委員会の意見を参考に、スムーズに選任された。
第4号議案 横浜弁護士会司法制度改革審議会対策特別委員会設置および委員選任の件。
 この特別委員会は、現在衆議院を通過し、参議院で審議中の司法制度改革審議会に対応する委員会である。政府はこの審議会での審議については二年程度を目処として、早急に結論を出して司法改革を実施していくという意向を示している。
 これに対し、日弁連は当初審議会の設置に反対していたが、審議会設置必至となるに至り、これを放置する事無く日弁連の意見を反映させる必要性から司法制度改革審議会対策本部を設置し、その対策を講じることにしている。
 当会としても、当会の意見の迅速な集約を始め、調査・検討の必要があるため、法案成立前ではあるが、早急に設置したいとの説明がなされた。又、理事者からは、これは本年度の最重要課題の一つであるとの表明がなされた。
 活発な討議がなされ、常議員からは、これは重要問題であるので、ファックス等を利用して、会員へ情報を迅速に周知徹底するよう計って欲しいとの意見が出され、理事者もこれを了解し、承認可決され、委員の選考も行われた。
第5号議案 撤回。
第6号議案 当会のOAシステムの更新に関する件。
 数年来当会のコンピューターに各種問題が発生していたため、理事者および総務委員会で継続検討してきたものである。この度当会のシステムとしては最適との意見を受け、その契約締結のための議案であった。二〇〇〇万円弱程度の予算を伴うため、慎重審議の上承認可決された。本年末には稼働を予定しており、当会のより迅速な事務処理が期待される。
第7号議案 民事介入暴力事案等に対する連携についての協定締結の件。
 非弁護士取締民事介入暴力対策委員会の池田忠正委員長より、これまで実績のあった、神奈川県警、社団法人神奈川県暴力追放推進センターとの協力関係を、協定書により明文化したいとの説明がなされ、承認可決された。
第8号議案 会館補修費借入金の一括弁済の件。
 会館補修資金の会員の支払いが順調なため、借入金を一括返済したいと提案され、承認可決された。
第9号議案 神奈川県・横浜市の無料法律相談受任手続実施の件。
 県及び横浜市との協議の結果、平成一一年一〇月一日より、受任手続が実施される事を承認するものであり、承認可決された。尚、法律相談センターとは方式も異なり、又、禁止行為も設定されているため、弁護士会からの通知については充分注意する必要がある。
第10号議案 入会申込者の入会許否の件。
 常議員会に検討小委員会(七名)を設置して検討する事になった。尚、紙面の都合上詳細は次号以降に記載する。

常議員からズバリひとこと
 お互いを尊重し、気楽な雰囲気の中、自由に本音の議論ができる横浜弁護士会は大好きです。「司法制度改革審議会」設置法が衆院を通り、これからは司法改革と司法改悪が混在する形で矢継ぎ早にくり出されることが予想されます。今後も、横浜弁護士会は断固として萎縮することなく、決議、会長声明、集会等々様々の形で、憲法・人権の危機に対しては果敢に意見表明をし、全国の弁護士会の中でも先頭を切って人権の砦として行動を続ける会であって欲しいと思います。(二八期 茆原 洋子)
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