横浜弁護士会新聞

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1999年9月号(1)

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県民集会プレシンポ 法曹人口問題を考える
あなたは増員に賛成? 反対?
 7月21日、本格的な夏の到来を告げる激しい夕立のなかで、県民集会プレシンポ企画「法曹人口問題を考える」集会が弁護士会館大会議室で開かれた。集会では、法曹人口増員積極派(法律扶助の観点から山本安志会員、刑事弁護センターの観点から山本一行会員、ほかに武井共夫会員、島崎友樹会員)、消極派(斉藤尚之会員、藤田温久会員)に分かれて意見を述べ合う方式で行われた。

積極派と消極派にわかれて論議 参加者らが活発な意見の交換
一、はじめに

 裁判官の増員の必要性と審理期間、裁判官の増員と法曹一元制度導入との関連について意見交換がなされ、続いて被疑者国公選制度と法曹人口問題との関連が取り上げられ山本一行、山本安志会員がそれぞれ報告をした。
二、弁護士に対する需要は増えるのか

 続いて法曹人口増員に見合うだけの弁護士の需要増は見込めるのかという中心的な争点に移り、斉藤会員は「少額事件等で増加はあるとしても、通常事件は横ばい、遺産分割事件は小子化でむしろ減るし、関連職種(隣接業種)が職務を分担することになる。結局は事件数増加は見込めないのではないか」と述べ、増員論者の見通しの甘さを指摘した。

 藤田会員からは「需要が増加しているのは債務整理が中心。多重債務問題が法改正等で解消されれば、事件は増加しない」との意見が出た。
三、市民のニーズにどう応えるべきか

 これに対し、武井会員は「弁護士に対する市民のニーズと、弁護士の経済的な基礎をささえるだけのニーズがあるのかという問題が混同されている。弁護士が経済的にむずかしくなったとしても、市民が弁護士の関与を求めている以上は甘受するほかない」、島崎会員は「日弁連が司法改革を掲げる以上は、職業利益の確保を前提に需給バランスをとるということだけではいけないのではないか」とそれぞれ指摘した。
四、弁護士自治との関係は

 法曹人口増そのものについての意見交換では、藤田会員は「一〇〇〇人体制の現状で検証をすべき。弁護士は資本や行政権力から独立した存在として役割を果してきたが、今後増加した弁護士は大資本や行政に吸収され、弁護士も弁護士会も自主性を失う可能性がある。こうした点の検証が必要である」と、斉藤会員は「弁護士のサービスは裁判の仕組みの中でのもので、純粋な民間とは言えず、規制緩和は必ずしも妥当しない」との意見をそれぞれ述べ、これに対し、武井会員は「法曹人口増加が必要である以上まず人口を増やし、増やしながら検証をして弊害があればそれを是正するため方策を考えるべき」との意見を述べた。
五、会場からの意見

 会場発言では、ベテランの会員から「法曹人口増加に伴う影響を評価する『法曹人口アセスメント』のようなものを日弁連主導で行うべきである」「法律扶助や国選で経営は維持できるか。十分な検討が必要である」「法曹の増加は二元的に考えるべき。弁護士を増やせば質の低下は否めない。量の拡大は準法曹などの増大で対応すべきで、一方高度の法律知識を要することは従来の法曹制度で対応すべきである」などという貴重な意見が寄せられた。

県民集会プレシンポ第2回のお知らせ
 9月29日(水)午後5時から、当会館5階大会議室において県民集会第2回プレシンポを行います。
 テーマは「これからの法曹養成制度…ロースクール問題をめぐって」です。遠藤直哉弁護士(二弁)と川島清嘉会員をゲストに迎え、司法試験合格者の大幅な増加を前提とした法曹養成制度のあり方について共に考えましょう。

年に一度! 法曹懇談会を開催
 七月一六日、弁護士会五階大会議室で法曹懇談会が開催された。裁判所二二名、検察庁一六名、当会一〇三名、合計一四一名の多数が参加し、にぎやかに幕が開いた。
 法曹懇談会は年に一度、法曹三者が持ち回りで幹事を担当しているが、冒頭、本年の幹事である検察庁の五十嵐紀男検事正から開会の挨拶があった。検事正の挨拶は、昭和三十年から始まった法曹懇談会の歴史を皮切りに、検察庁舎内に新設された接見室の運用状況まで、ユーモアたっぷりであった。
 次いで、岡本当会会長から乾杯の挨拶があった後は、単なる宴会と化し、同期の法曹三者が集まって、昔話に花を咲かせ、大笑いする姿があちこちで見受けられた。
 また、ある会員からは刑事事件で検察官から重い求刑を受け、文句でも言おうかと話をしてみたら、とてもいい人だったとか、若手の検察官からは参加者が多いので驚いたとか、裁判官からは仮庁舎でスペースがないとか、東京では考えられない会だとか、普段は聞けない率直な話を耳にすることができた。
 最後は星野当会副会長から閉会の挨拶があり、法曹懇談会を法曹一元実現の第一歩にしたいと高らかに宣言して閉幕した。
(浦田 修志) 

山ゆり
 携帯電話の利用者が急増している。会社員も、主婦も、学生も、なかには小学生でも持っている子がいる。かく言う私も、持っている。ただし、これは遅刻しそうなときの緊急連絡用だ
世の中便利になるのはいいが、携帯電話から伸ばしたマイクに向かって、手ぶらで話しながら歩いている人を見たときは、一種の感動さえおぼえた。独り言を言いながら歩いているのと同じなのだが、周りの目は気にならないらしい
町や電車の中で携帯電話をいじっている人を見たり、車を運転しながら使っている人を見ると、もう単なる道具というより、いつも連れ歩いていないと落ち着かない存在にまで達してしまったかにも思える。それは、従順にして役に立つ最愛のペットのようなものだ
いつでもどこでも友達に連絡が取れるという安心感。まるで自分の居所を知っているようにかかってきた時の満足感。オリジナルの呼び出し音やかわいいストラップの自慢話。一見すると、携帯電話を通じて、人の外とのつながりはどこまでも限りなく広がっているようだ
しかし、電話番号でつながった世界は、閉ざされた自分の小さな世界が前提だ。現代人の孤独と不安感の裏返しが、電波で結ばれた無数の王国を作りつつある。そして、携帯電話の電池が切れたときに、明るくて輝いていた世界は一瞬にして消滅することになる
携帯電話に思い知らせてやろう。おまえはただの機械だということを。どう逆立ちしたって、犬の温かみにも及ばない存在だということを。
(松井 宏之) 
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