横浜弁護士会新聞

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1999年9月号(3)

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民事介入暴力事案を撃退 三者協定締結
全国二番目
 七月一二日、横浜弁護士会において、神奈川県警察、神奈川県暴力追放推進センター、横浜弁護士会の三者において民事介入暴力事案に対する三者連携につき協定が結ばれた。
 この種の協定の締結は昨年一〇月の千葉県弁護士会についで全国で二番目となる。
 本協定においては民事介入暴力事案に対応するために、暴力団等に係る情報交換や研究、事例報告や検討、意見交換を行う協議会を設置するほか、個別の民事介入暴力事案に対応するための、三者が連携して事案解決に臨む事案処理チームを設けることを主な内容とする。
 本協定締結以前においても、民事介入暴力事件については事実上同様の協力体制がとられていたが、本協定締結により民事介入暴力に対する三者の協力体制が制度的に確立され確固たる基盤が築かれた意義は大きい。特に、バブル崩壊以後、暴力団等にあっては、債権取立業務や会社整理・倒産にからんだ占有妨害、競売妨害など、典型的な刑事犯ではなく民事にからむグレーゾーンでの活動を資金源としている実態があり、県警としては法的専門家である弁護士との提携により、その資金源を断つ道が開かれる一方、武力装置を持たない弁護士においては、県警との協力体制のもとに暴力団事務所の立ち退き等、民事介入事件に対して積極的に事案を解決できるという利点がある。
 本協定の締結は、民事介入暴力による被害救済と予防という市民の期待により一層貢献しようというものであり、その運用実績が期待されるところである。
(栗田 誠之) 

シリーズ司法改革 その3
全司法労組神奈川支部 山島めぐみ書記長に聞く
(全司法労働組合とはどういう組織ですか)

 裁判官以外の裁判所職員で組織されている労働組合です。書記官、事務官、調査官、速記官などで、神奈川支部の場合組織率は五〇%位です。
(司法改革に対してはどのようなご意見をお持ちですか)

 私たち組合の全国定期大会でも、司法の現場で働くものの立場から「国民のための裁判所」の実現をはかるため司法制度改革論議に積極的に参加することとし、真に司法改革を実現するためには裁判所の人的・物的充実が前提だとの意見を出しています。

 これは全くその通りで、法律や司法制度の改革だけが先行しても、それを実現するだけの裁判所の人員や、施設が追いつかないと混乱してしまいます。今の職場の現状ですら、数をこなすことがいっぱいで、当事者の顔も見られない、問い合わせにも十分答えられない状況になっています。これが、人的・物的な裏付けがないままに司法改革となって多くの事件が裁判所に殺到した場合、どんなことになってしまうか心配です。

 忙しい支部になると、裁判官と書記官、調査官などとの打ち合わせも十分にできない状況です。
(職員の増員などの要求はしているのですか)

 組合でも毎年のように裁判官を含む裁判所職員増員の要求を出していますが、裁判官増員に関しては組合との協議事項ではないと言われてしまいます。他の職員についても要求が認められるのは極くわずかです。
(法曹一元や、陪審・参審制度についてはどのようにお考えですか)

 法曹一元で違う立場の人が裁判するのは良いことだと思います。弁護士は、当事者の言い分を法律的に構成して解決策を考えるということをしていると思うのですが、裁判官の両当事者から言いたいことを聞いて判決するという仕事にも相通じるものがあり、元弁護士だからどうというよりはむしろ個人的能力の問題だと思います。

 法曹一元は法律家内部のことで、陪審・参審は国民の司法参加になります。陪審・参審を本気で導入しようと考えるなら、国民に対する法学教育が必要でしょう。
(弁護士人口を飛躍的に増加させるべきだとの意見がありますが、これに対するご意見をお聞かせ下さい)

 弁護士の数全体の問題ももちろんですが、大都市に偏っていることも問題ではないでしょうか。他県のある支部の話では、弁護士が少ないため、裁判所がよろず相談所になってしまい、家裁の受付相談がなかば法律相談になってしまっていると聞いています。
(速記官養成が停止されたことと、司法改革とはどのような関係があるとお考えですか)

 外注方式が進行しているわけですが、司法改革でどんどん事件が押し寄せる中で、外注方式はどういう意味を持つか考えなければなりません。迅速な処理は良いことですが、現状では押し寄せる事件数に対して、それに流されて一丁上がり方式になってしまっているのではないかとの疑問もあります。破産事件や少年事件で集団的処理が進んでいますが、これも数をこなすために理念の部分はとりあえず置いておいて、そうせざるを得ないのが現状です。速記官養成停止、録音反訳導入についても同様に、裁判記録のあり方という理念の部分は置いて行かれて、なし崩し的に事実だけが先行しているものではないでしょうか。「国民のための裁判所」と言うためには、迅速処理は必要でしょうが、そのためには前述のような一丁上がり方式になってしまってはならないと思います。
(インタビュー 星野 秀紀副会長) 

常議員会レポート
国旗国歌法案等三件の会長声明を承認
第五回常議員会 七月八日(木)
第五回常議員会は出席者二五名を得て開催された。
第1号乃至第3号議案 当会・日弁連・その他委員会の委員の選任及び推薦の人事案件であった。
第4号議案 ILO行政裁判所裁判官候補者推薦の件、

 裁判官としての高い経歴(最高裁判事等)、及び二カ国語以上の日常的使用の問題があり、推薦しない事となった。
第5号議案 平成一一年度横浜弁護士会人権賞選考委員選任の件、

 昨年度委員の留任が承認された。
第6号議案 会館補修工事実施の件、

 手摺の塗装、非常用バッテリーの交換、男子トイレの改修等七ケ所の要修理箇所の説明がなされたが、合い見積りを取得し、金額が確定し次第上程するという事で、継続審議となった。
第7号議案 市民サービス体制の整備に伴う会館一階の改修工事の件、

 本年一〇〜一一月頃に、自治体の法律相談の直受け制度の開始、法律扶助の無料法律相談の開始、クレサラセンターの開設がいずれも予定されており、事務量の増加が予想されている。そのため、一階に新たに三名の職員配置、及びカウンター窓口の増設が必要となっている。そこで、現在設置しているメールボックスを四階の会員控室に移設した上、その場所を仮設事務室とする必要がある旨説明された。一階裏のピロティーが返還された際は、その改修工事により増設された仮設事務室は取壊しとなるため、あくまで仮設の事務室となること、又、その緊急性が理事者から説明された。審議の結果、改装については承認されたが、見積りを確定した上、次回、業者・金額を決定する事になり、継続審議となった。

 弁護士会の事務量はここ十年で飛躍的に増大を続けており、将来的には会館の改築を含めその利用について真剣に検討する必要が迫ってきているように思える。
第8号議案 パート職員増員の件、

 前号の議案に関連し、パート職員三人枠の増員の必要となる事が説明され、理事者提案どおり、承認可決された。
第9号議案 住民基本台帳法の一部を改正する法律案に対する会長声明の件、

 理事者提案どおり承認可決された。

 尚、国旗・国歌法案に対する会長声明も必要ではないかと提案され、熱心かつ活発な議論の上、臨時常議員会が開催される事となった。
第10号議案 入会申込者の入会許否の件、

 二名の申込者中残り一名についても入会が不適当であって日弁連に進達しない(所謂、登録拒否に該当)のが相当である旨の小委員会の意見書が提出され、審議の結果、資格審査会において審査する事となった。

 なお、前回進達不相当として資格審査会において審議中であった入会申込者は、申し込みの取り下げがあった旨報告された。
第11号議案 職員給与の件、

 前回承認された、新給与規程に基づく職員への具体的適用例が示され、承認可決された。
  
臨時常議員会 七月二六日(月)
第六回(臨時)常議員会は出席者一八名を得て開催された。
第1号議案 国旗及び国歌に関する法律案に関する会長声明の件、

 声明案を訂正することを条件に承認可決された。
第2号議案 撤回
第3号議案 前回第7号議案(継続)の件、

 大幅減額交渉に成功し、いずれの業者にするか理事者一任で承認可決された。
第4号議案 委員推薦の件、

 理事者提案どおり承認可決された。
第5号議案 裁判所の保釈実務の運用に関する会長声明の件、(安田弁護士事件関連)

 理事者提案どおり承認可決された。
(副議長 箕山 洋二) 

常議員からズバリひとこと
 初めて常議員になり、毎回討議される議題の多さに驚いた。議題も多岐にわたっており、弁護士会と会員弁護士に求められている役割の多さを感じる。
 第五回では、国会で審議中の国旗・国歌法案に対する声明を出すか否かが議論され、緊急に臨時常議員会を開催して継続審議することになった。世の中で問題となっている大きなテーマについて、弁護士会が法的見識に裏付けられた意見をタイムリーに表明することも、社会的に求められている弁護士会の重要な役割なのだろうと思う。それにしても、日々の研鑽の必要性を痛感している。
(四二期 大塚 達生) 
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