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電子書籍の功罪

2023年10月20日鈴木 洋平弁護士

 本が好き,という人は多いと思う。私もそれなりにではあるが本が好きだ。小説,ノンフィクション,エッセイなど活字であれば何でも好きだ。出かける際には必ず本を持って出かける。移動中に本を読む。気づけば目的地。本は一種のワープ装置である。本好きあるあるかもしれないが,読みかけの本を持っていく場合,追加でもう1冊持っていくか,非常に悩む。今読んでいる本が移動の最中に読み終わってしまうかもしれない。そうであれば,もう1冊持っていくべきか。さりとて,荷物が多くなるのも好ましくない。さて,どうするか。

 このような懊悩の中,5年ほど前から電子書籍を利用するようになった。電子書籍であれば,何冊も本を持つ必要はない。端末の中に無数の本が陳列されている。さながら書庫を持ち歩くのと同様である。これで本を何冊持ち歩くか悩まなくて済む。長年の悩みから解放され,気分爽快である。

 このような話を妻にしたところ「書斎って必要なの?」と言われた。盲点だった。手狭な賃貸物件に,私だけの小さな書斎を構えている。秘密基地のような小さな小さな書斎。大切に育ててきた書斎が,私の不用意な一言で消滅しかけた。なんとか書斎の必要性を力説し(説得技術として日頃の弁護士業務が役立ったことは言うまでもない。),妻も書斎の必要性に理解を示してくれた。

 電子書籍によって,秘密基地が崩壊しかけた。いや,電子書籍のせいではなく,私自身の安易な発言によってか。電子書籍に罪はない。ないはずである。

 これから先,紙の本が並ぶ書斎で,電子書籍を読むといういささか歪な状態が続くことになる。電子書籍によって紙の本が徐々に減少することは本好きとしては寂しいものの,紙の削減を推進する当会の一員としては喜ぶべきかとも思う。

 小さな書斎に電子書籍という無限の書棚を構える。きっと,より一層深い読書の沼に落ちる。これこそが電子書籍の罪なのかもしれない。

写真1

小さな書斎に無限の書棚

 

執筆者情報

弁護士名 鈴木 洋平
事務所名 安富総合法律事務所
事務所住所 横浜市中区山下町70-3 Yokohama Bayside Building7階
TEL 045-222-2773
FAX 045-222-2774
Webサイト https://www.yasutomi-law.com/

 

こちらに記載の事務所情報等は執筆当時の情報です

 
 
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