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会長声明・決議・意見書(2023年度)

憲法記念日を迎えての会長談話

2023年05月02日更新

1 日本国憲法が施行されてから、本日で76回目の憲法記念日を迎えました。

 

2 憲法は国の最高法規です。日本国憲法は、基本的人権の尊重、国民主権及び恒久平和主義を基本理念としています。そして、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務があり、このように憲法によって、国家権力を縛り、個人の人権を保障するという考え方こそが立憲主義です。

 

3 日本国憲法は、第二次世界大戦の深い反省から、二度と戦争を起こすことのないよう国際協調主義の下での徹底した恒久平和主義を掲げています。しかしながら、2014年の閣議決定を経て、2015年に集団的自衛権の行使等を容認する安全保障関連法が成立しました。神奈川県弁護士会は、安全保障関連法が憲法9条に違反すると考えています。憲法違反の法律は無効であるため、当会では、安全保障関連法の廃止を求めて活動を続けています。そして、昨年、その安全保障関連法の存在を当然の前提として、「反撃能力」の保有を認める新たな安保三文書が閣議決定されました。当会は、この「反撃能力」の保有についての閣議決定が憲法の定める平和主義及び立憲主義の理念に反することを指摘し、これに反対しています。当会は、現下の国際情勢の中でこれまで以上に平和が希求される時だからこそ、世界においても先駆的意義を有する日本国憲法の恒久平和主義と国際協調主義を掲げ国際平和が実現されるよう活動してまいります。

 

4 憲法改正については、国の憲法審査会において、憲法9条の問題のほかにも、憲法改正手続法(国民投票法)の改正、緊急事態条項創設及び国会議員の任期延長などについて議論されています。当会は、立憲主義の理念に反することのないように、これらの議論を今後も注視してまいります。

 

5 日本国憲法の制定に伴い、人権保障と公正な裁判の実現のため、刑事訴訟法が制定されています。しかしながら、再審制度については、職権主義的訴訟構造を基調とする戦前の旧刑事訴訟法の規定をそのまま引き継ぎ、その後も一度も改正されることなく、既に70年以上が経過しています。当会では、えん罪からの救済のための最終手段である再審という重要な制度における再審請求人の権利保障に様々な深刻な問題が生じている現状に鑑み、国に対し、適切な刑事訴訟法の改正を速やかに行うことを求めるためにこれまで以上に活動します。

 

6 日本国憲法は、裁判を受ける権利を基本的人権の一つとして保障しています(憲法32条)。国はすべての国民が平等にこの権利を享受できるように司法制度を整えるべきであり、居住する地域によって裁判を受ける権利に差異があってはいけません。しかしながら、神奈川県下では、例えば、相模原市で合議制裁判が行われておらず、これは全国の政令指定都市の中で唯一の例外です。また、藤沢簡易裁判所管内において、管内人口が120万人を超えているにもかかわらず、地裁・家裁の支部が存在しません。これらは、国民の司法アクセスという点で支障が生じているものであり、裁判を受ける権利の侵害ともいうべき事態といえます。当会としては、関係諸機関と連携し、改めて、国に対し、司法制度の改善を求めていきます。

 

7 基本的人権の擁護と社会正義の実現は弁護士の使命です。基本的人権の尊重は、多様性を許容し、一人ひとりの立場や考えを尊重することです。「同調圧力」ではなく、自分と異なる意見や考えも尊重することが必要です。私たちは、自分自身が差別の対象にならなければよいということではなく、差別そのものを根絶する活動を通じて、基本的人権を擁護し続けてまいります。

 

8 今後も神奈川県弁護士会は、日本国憲法の理念が社会のすみずみまで行き渡るように、そしてその理念を成就させるために積極的に活動していく所存です。

 

2023年5月3日

神奈川県弁護士会

会長 島崎 友樹

 

 
 
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