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会長声明・決議・意見書(2025年度)

司法修習「谷間世代」への一律給付実現及び基金制度への支援を求める会長声明

2025年12月26日更新

  当会は、国に対し、司法修習期間中無給であった新第65期から第70期までの法曹(いわゆる「谷間世代」)に対する不平等を是正するため、谷間世代に対する一律給付を実現する法整備をすることを求め、また、谷間世代及び司法修習第71期以降の若手・中堅法曹の活動を応援するため、日本弁護士連合会が提唱する基金制度を経済的に支援することを求めます。

 

  1.  日本国憲法は立法、行政、司法の三権分立を取り入れ、司法権を独立させ、行政権による人権侵害を防ぎ、人権保障の砦としました。
     この司法権を担うのは裁判官、検察官、弁護士の法曹三者です。法曹は国民のための社会的インフラであり、法曹の養成は国の責務です。
     法曹になるためには、司法試験に合格した後、司法修習を受けなければなりません。司法修習は法曹を養成するために不可欠の過程であり、国民の人権の守り手を養成するためにあるものといえます。そのため、司法修習生には、厳格な修習専念義務が課せられています。
  2.  このような役割に鑑み、戦後1947年に司法修習制度が開始されて以来、司法修習生に対し、公務員の初任給並みの給与が支給されてきました。
     ところが、裁判所法の改正により、2011年採用の新第65期以降の司法修習生については、給与の支給が打ち切られ、生活資金が貸与される制度となりました。
     その後、再度の裁判所法改正により、2017年採用の第71期以降の司法修習生に対して、修習給付金の支給が開始されましたが、司法修習新第65期から第70期までの者に対しては、何らの救済措置も取られておりません。
     また、第71期以降の司法修習生に対する修習給付金も月額13万5000円にすぎず、不十分な額にとどまりました。
  3.  司法試験の出願者は、給与支給が打ち切られる前だった2011年には1万1892人でしたが、その後減少を続け、2021年には3754人、2022年には3367人となりました。現在では若干回復したものの、本年の出願者は4074人であり、2011年の約3分の1にすぎません。
     国が谷間世代の不平等を是正してこなかったことが、国の司法修習制度への不信感を招き、法曹志望者の減少の一因となったことは否めません。
  4.  政府は、本年6月、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(いわゆる「骨太の方針2025」)において、「法曹人材の確保等の人的・物的基盤の整備を進める」「国際法務人材の育成」と記載し、「法曹人材の確保等」の注記に、「法教育の推進、公益的活動を担う若手・中堅法曹の活動領域の拡大に向けた必要な支援の検討を含む」ことを明記しました。
     法曹人材を確保するためには、現状不十分な修習給付金の増額や公益活動を担う若手・中堅法曹に対する支援が必要ですが、さらには、取り残された谷間世代の救済が必須です。なぜなら、谷間世代はまさにこれからの法曹人材の中心となる立場にあり、その受けている不平等の問題を解消することで、法曹界がより一体として社会に対し力を発揮できるようになり、次世代の法曹志望者に対する安心感を与えることにもなると考えられるからです。
  5.  第212回国会の衆議院法務委員会(2023年11月10日)においても、質問に立った議員が、「これは大変な人権問題だと思います。」と、谷間世代の救済の重要性を明確に指摘しています。
     また、日本弁護士連合会には、2025年11月4日の時点で全議員数の過半数を大きく上回る409名の国会議員から、谷間世代の問題の是正措置を求める取り組みに対して、応援メッセージが届いております。これらの応援メッセージは、谷間世代の問題の早期解決を求める国民の声の表れといえるものです。
  6.  当会は、国に対し、骨太の方針2025で示された政府の方針を踏まえ、有為な法曹人材を確保すべく、谷間世代に対する修習給付金と同額の一律給付を実現するための法整備と、谷間世代及び司法修習第71期以降の若手・中堅法曹の活動の応援のために日本弁護士連合会が提唱する基金制度を経済的に支援する具体的措置について、速やかに実現することを強く求めます。

 

2025年12月25日

神奈川県弁護士会

会長 畑中 隆爾

 

 
 
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