2025年12月26日更新
今年は、戦後80年の節目の年である。また、集団的自衛権の行使等を容認したいわゆる安全保障関連法(以下「安保関連法」という。)が成立してから10年が経過した。
安保関連法が憲法9条に違反することは、元最高裁判事、元内閣法制局長官、多くの憲法学者、日本弁護士連合会及び当会を含む全ての弁護士会等が繰り返し指摘したところであるが、それらの意見が全く容れられず、今日に至っていることは実に遺憾である。
さらに、政府は、安保関連法の枠組みに基づき、2022年12月に国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画(以下「安保3文書」という。)を閣議決定し、他国領域での武力行使を前提とした「反撃能力」の保有を含む防衛力の抜本的な強化の政策を打ち出した。当会は、2023年3月7日の臨時総会において、「『反撃能力』の保有に反対し、日本国憲法の理念に立脚した国際平和の実現をめざす決議」を採択し、「反撃能力」の保有が憲法9条及び立憲主義の理念に反することを指摘している。
その後、本年秋以降、政府は安保3文書の前倒し改定を具体的に検討しており、その内容は、安保関連法や安保3文書に示された方向性をより一層推し進め、防衛関連費のGDP比2%の前倒し達成のほか、次世代の動力(原子力)を活用した潜水艦の保有や、武器輸出規制の更なる緩和の検討などにも及び、非核三原則の見直しすらも検討される可能性がある。
しかし、原子力潜水艦の導入は、「反撃能力」の保有とつながるものであり、原子力の利用について平和目的に限っている原子力基本法にも違反するものである。また、武器輸出規制の緩和は、平和国家として国際紛争を助長しないとしてきた立場に真っ向から反する。さらに、非核三原則の見直しは、唯一の戦争被爆国として、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則を国是として遵守することを国会決議で何度も確認してきた我が国の立ち位置を、大きく揺るがすものである。これらが実現すれば、憲法9条の恒久平和主義は、著しく形骸化してしまうおそれがある。
当会は、戦後80年及び安保関連法成立10年の節目に当たり、世界各地で悲惨な戦争が続いている状況を踏まえ、今一度、戦争が最大の人権侵害であることに深く思いを致したい。そして、人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として、憲法の平和主義と立憲主義を堅持し戦争も核兵器もない世界を実現するために、調査・研究、意見表明、市民への情報提供等の活動を通じ、最大限の努力をしていく所存である。
2025年12月25日
神奈川県弁護士会
会長 畑中 隆爾
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