横浜弁護士会新聞

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2002年8月号(2)

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吉川会員に大きな拍手を 横浜弁護士会司法制度改革実現本部
都市型公設事務所設置に向けて積極的な議論を
横浜弁護士会司法制度改革実現本部
事務局長 小野 毅
 このたび、当会の晋平会員が、新しく日南に設置される公設事務所に赴任することになった。会員の決断に大きな拍手を送りたいと思う。
 このような過疎地型の公設事務所は、裁判所支部管内の弁護士の数が〇ないし一である、いわゆるゼロワン地域の解消のために、日弁連の肝いりで全国各地に設置されるようになった。過疎地型の公設事務所には、各単位会の弁護士が数年間の任期で過疎地に常駐するものである。現在でも一二カ所の公設事務所の設置を予定しており、応募する弁護士を募集している。当会からも、会員に続いて応募する弁護士がでることを大いに期待したい。
 また、日弁連では、協力事務所の募集もしている。協力事務所とは、弁護士過疎地域で活動することを希望している弁護士を雇用して、公設事務所に派遣すること・過疎地で開業することに対し助力すること・業務の相談にのること等の協力あるいは公設事務所での任期が終わった弁護士の受け皿となる協力などを行う事務所のことである。
 当然のことながら、当会でも可能なものであって、是非たくさんの協力事務所がでることを期待したい。当会では現在のところ協力事務所が一つに止まっているということであるので、会員の快挙をきっかけとして是非増えてほしいと思う。
 さて、以上のような過疎地型の公設事務所の話とは別に、当会の司法制度改革実現本部で現在議論されているのは、神奈川県内での公設事務所いわゆる都市型公設事務所と呼ばれている問題である。
 既に、この種の公設事務所は、大阪をはじめとして二弁・東弁において合計三カ所に設置されている。当会は、日弁連から強くその設置検討を求められている。
 都市型公設事務所の設置目的は、事件過疎対策・弁護士任官・判事補研修あるいは刑事弁護対策等である。事件過疎対策というのは、少額事件・行政事件やDV事件等弁護士に依頼したくとも断られることが多く、市民の司法アクセスに著しい障害になっている事件について、公設事務所において受任していこうとするものである。大阪や二弁などでは、この目的で公設事務所を設置した。
 また東弁では、弁護士任官希望者をこの公設事務所で受け入れて、恒常的に弁護士任官者をだしていくことを目的に公設事務所を設置した。更に、国費による被疑者被告人弁護人制度ならびに裁判員制度という新しい刑事事件制度が始まるとするならば、その対策としての公設事務所の設置という考え方も日弁連からは提示されている。このような公設事務所の設置には多大な費用がかかることが予想される。
 現在当会の財政は極めて厳しい状況にあるが、昨年度に提出された財務室の答申書においても、公設事務所の設置についてはその必要性を認めている。
 司法制度改革の諸課題を積極的に達成するための制度として、都市型公設事務所の設置は、当会の焦眉の課題となっていると言わざるを得ない。会員の皆様の積極的な議論そして設置のための援助を是非お願いしたい。
 このような状況のもと、会員が日南公設事務所に赴任する。会員が健康に留意し活躍することを心より期待するとともに、会員の今回の英断を当会の会員として誇りに思う。

えいちゃんは日弁連でも考える
日弁連副会長 須須木永一
 皆様ご無沙汰しています。六月には私のため盛大な会を催していただき、心からお礼申し上げます。ありがとうございました。この四月から日弁連に行く様になってもう四カ月が経過してしまいました。早いものです。
 さて難しい話は別の機会にさせていただくことにして、今回は私がどのような生活をしているのかをご紹介します。
 まず平均的な一日ですが、朝九時少し前に日弁連の副会長室に入ります。九時を少しすぎた頃、仲間の副会長達が三々五々やってきます。単位会の会長をかねている副会長を除いては、皆ほぼ常駐し頑張っています。司法改革関連の会議や委員会などは、早いときは午前九時から始まります。時には政党の委員会などに出席することもありますが、朝八時から始まるものがあります(議員のみなさんお元気ですね)。
 副会長にはそれぞれ担当があります。ここで私の担当をご紹介しましょう。まずは司法改革関係です。仲裁検討会(あまり聞き慣れないと思いますが)、総合規制改革会議(何か恐ろしい会議ですね)、司法改革国民会議(強い味方になってくれるといいのですが)を担当しています。委員会は両性の平等、知的所有権、知的財産権仲裁センター、コンピューター研究、高齢者・障害者、国際交流、(もしかして私とは似つかわしくない?)です。その他正副会長会があります。だいたい午前一〇時頃から午後五時半頃までで、予想していたよりは早く終わります。七月までに、約二〇回ほど開かれました。あとは理事会です。池田忠正・小島周一理事の大活躍をいつも楽しんでいます。理事会は八回ほど開かれましたが、二日間連続で開かれます。理事の皆様方本当にご苦労様です。
 こんな生活ぶりをお話しすると、あまりいい生活していないみたいに思えるかもしれません。しかし何故か楽しくてしょうがないのです。それは素晴らしい仲間に恵まれているからだと思います。集まれば皆でワイワイガヤガヤ、学生時代に戻った気分でついには全員がアダナで呼びあうような仲間同士になってしまったからかもしれません。これが私の日弁連の生活です。とりとめのないお話しをしてしまいましたが、機会がありましたらまたお話しさせて戴きます。それでは、またいずれ。そうそう、東京にいらっしゃることがありましたら、是非一六階までお越しください。お待ちしています。

「虐待問題に直面したら」虐待問題研修会
 六月七日、虐待問題研修会が開催され、二五名の会員が出席した。
 講師は、児童虐待問題に詳しい海野宏行会員が務め、スライドを使ったり、虐待が絡む事件を扱ったことのある会員に発言を求めたりしながら、講義を進めた。
 講義の内容は、虐待の実態、児童虐待の防止等に関する法律の解説、審判に付された少年の実に六割が虐待を受けた経験があるとの日弁連の調査結果や、虐待への対応など弁護士業務に比較的結びつき易いものから、虐待の発生原因や虐待が子どもに与える影響、という心理学的な問題に至るまで、実に多岐に渡り、二時間はとても短く感じられた。
 個人的には、虐待の発生原因についての話に興味を持ち、「虐待の連鎖を断ち切るには」等と考えてしまったりもした。
 児童虐待というと何か特殊分野のように聞えるが、離婚事件や少年事件の裏側に虐待の事実が潜んでいることもあり、通常事件を扱う上でも、虐待問題の知識が必須であることを痛感した。
 子どもの権利委員会虐待問題部会のバックアップが受けられるとのことなので、「虐待」と疑義が生じた時は、相談されることを勧める。
(会員 関守麻紀子)

民事重要判例レポート
 六月一七日、弁護士会館五階において、「平成一三年度民事重要判例の解説」についての会員研修が行われた。講師は、本年度から、佐藤彰一立教大学教授・第二東京弁護士会会員。
 平成一三年度の最高裁判決五〇件のうち三八件について解説いただいた。その一部を紹介すると以下のとおりである。
▽文書提出命令につき、信用組合の貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利益に供するための文書」に当たるとはいえない特段の事情があるとされた事例(組合の経営破綻を理由とする)。
▽集合債権の譲渡担保契約における債権譲渡は譲渡担保設定通知により第三者に対抗できるとした事例、および、指名債権譲渡の予約についてされた確定日付のある証書による債務者の承諾をもって予約完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗できないとされた事例。
▽数量指示売買において数量が超過する場合、売主は民法五六五条の類推適用を根拠として代金の増額を請求できないとされた事例(測量士による測量のミスの事案)。
▽優先順位の抵当権者に対抗することができる賃借権により競売不動産を占有する者に対しては、この者の債務を担保するために当該不動産に設定された抵当権に基づく競売開始決定がされていた場合を除き、引渡命令を発することはできないとされた事案(東京地裁の従前の実務をひっくり返す判例)。
 インターネットやCD−ROMで容易に判例検索ができるようになったこともあってか研修会の出席者数は低迷しているようだ。が、出席してみると、普段の業務では触れることのできない分野の知識が得られ、興味深かった。

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