横浜弁護士会新聞

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2002年9月号(3)

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論壇 「神奈川司法計画」と裁判所の適正配置
会員  間部 俊明
 横浜弁護士会では、昨年「神奈川司法計画」(一次案)を作成し、県民各位に議論をお願いしてきた。それらを踏まえて「計画」の改訂作業中である。
 なぜ、今、「神奈川司法計画」(以下「計画」)か。医療法は都道府県に地域における医療計画を作るよう求めており、神奈川県は八七年二月に全国に先駆けて「神奈川医療計画」を作成した。今では「神奈川県保健医療計画」が策定されて、県民がいつでもどこでも良質な保健医療サービスを身近な所で受けられるよう、地域を基盤としたシステムの構築が図られている。
 私たちの「計画」は司法改革運動の中で、こうした医療計画に触発された横浜弁護士会が、地域から始める司法改革の具体化作業として取り組んでいるものである(日弁連は全国の単位会に呼びかけて地域司法計画策定運動を行っている)。「計画」の提言は、裁判官・検察官の大幅増員、司法予算の大幅増額など多岐にわたっているが、ここでは裁判所の適性配置について述べる。
 昨年六月に提出された司法制度改革審議会意見書は、「国民の期待に応える司法制度」の確立を改革の目標の第一にあげ、地家裁支部や簡易裁判所の配置は人口や事件数、交通事情等を考慮して不断の見直しをすべきであると明記した。これを受けて「計画」は、相模原支部で合議事件が扱えるよう体制を整備することを提言した。管内人口が八〇万人いるにも関わらず、単独事件しか扱えないと言うのは不合理と考えたからである。相模原市がこれに賛同し、当会の相模原支部は市長の出席を得て、本年一月、合議制実現を求めるシンポジウムを開催した。こうした動きに神奈川新聞が注目し、三月には「八〇万人都市の司法過疎なくせ」というタイトルで社説を書いた。当会相模原支部では、市議会で合議制実現に向けた意見書を採択してもらうことを含め、実現運動を強めようと考えて、広範な人士による懇話会を設立しようと準備中である。地元選出の国会議員に働きかけたところ、ベテラン秘書から司法のことで地元から陳情があったのは初めてだ、しかし良く分かった、代議士に伝えるとの積極的な反応があったり、地元在住の神奈川大学教授や相模原市に進出する青山学院大学の教授が関心を持って準備会に参加するなど地元での支持は広がっている。
 さらに、この議論の中で町田市で法律相談をしている会員から、「相談者に、裁判は東京地裁八王子支部でやることになると話すと、町田駅からJRに乗ると裁判所のあるJR相模原駅を通るのに、どうして遠い八王子まで行かないと裁判出来ないのか」と怪訝な顔をされて困るという発言があり、話は土地管轄の県境を越えた見直し論に及んでいる。相模原支部問題は日弁連でも注目され、同じ悩みを抱える埼玉県弁護士会でも、さいたま地裁越谷支部で合議事件が扱えるよう運動しようという機運が起きているという。
 「計画」は、一〇〇万人都市である川崎市の北部にもう一箇所簡裁を新設すべきであるとか、繁忙庁である神奈川簡裁(管内人口一三一万人余り)の管轄を分けて、緑、青葉、都筑の三区のどこか交通の要所に簡裁を新設することも提言している。この他、繁忙庁である藤沢簡裁(管内人口一〇五万人余り)の管轄を分けて、海老名市や綾瀬市の住民は、藤沢に出るより小田急線で本厚木に出る方が近いのではないかと問いかけている。厚木簡裁の管内人口は平成一一年度の統計で三六万人余りであるが、両市が加わると約五六万人となり、横須賀支部の管内人口にほぼ匹敵する。そうだとすると、横浜地裁厚木支部新設ということも空論ではなくなってくる。利用しやすく頼もしい裁判所にするために、引き続き「わが町」の裁判所のあり方を考えようと思う。

新シリーズ 理事者室の窓
副会長 尾立 孝司
 人事担当である。
そこで、今回は福に恵まれるという、副会長について閑話一言
(副会長)会則上、すべての執行責任は会長がとることになっているので、気楽にできる。ちょうど弁護士の仕事が中弛みする頃にくるので、楽しいひと時となる。もっとも物心ともに一年間で息切れする。
(副会長後厄)「功は舎(お)かざるにあり」という訳で、各種委員長・副委員等が後役で準備されている。事務局運営室、財務室なども加わり、盛りだくさんの盛り付けに。ごりやくは一つだけがいいのですが。
(日弁連副会長)これも本来補佐役だが、昨今の改革の嵐の中で単なる補佐以上の活躍が期待される。須須木副会長のようにフットワークがよく、頑健な体に恵まれている人は適任
 そこで今期理事者の何名かは、ワインの香りの中で思いついた。当会では、例えば調査室、事務局運営室等を支えているようなバリバリの若い世代を候補に出すというのも悪くない、と。
(若い世代の日弁連副会長あとやく)
 もちろん弁護士任官、時に公設事務所所長その他、幅広く法曹界で活躍を予定
 そういえば五〇歳後半で公設事務所に応募した当会の強者もいました。年齢に関係なくバリバリの人もいるようです。
 バリバリの人、会員の勇気をたたえ、池田会長の一句
國生みの地に出陣の夏羽織
忠山

常議員会レポート第6回(平成14年8月8日)
 今月の常議員会の議題は、人事案件と元裁判官からの入会申込についての許否の件のみであった。例年、八月は議題も少なく、常議員会も開催されないことが多かったようであるが、今期は、司法改革の議題も多く、議論も白熱していることから、八月と言えども、常議員会を開催することに当初から決定していた。
 しかしながら、やはり議題は少なかった。人事案件は、理事者提案通りに承認され、元裁判官の入会申込も許可された。
 そこで、理事者からの今後の予定についての報告が詳細に為された。
報告事項
1 七月二五日付けで発表した「国選弁護人の報酬支給基準に関する会長声明」は、内閣総理大臣、財務大臣、最高裁長官、県内自治体の首長他に郵送するとともに、司法記者クラブに持参して執行した。
2 七月二五日付け記者発表した「有事法制三法案に関する決議」(常議員会決議)は、内閣総理大臣、法務大臣、防衛庁長官、衆議院議長、神奈川県選出の国会議員、県内自治体の首長他に郵送するとともに、司法記者クラブに持参して執行した。
3 一一月三〇日(土)に予定されている弁護士フェスタについて、田中副会長から詳細な報告があった。メインは、裁判員劇である。各地で取り組まれている裁判員劇のシナリオを取り寄せて、弁護士フェスタに相応しいものをと研究しているとのことであった。評議体も裁判員の人数を変えて、複数構成する他、高校生だけの評議体を作るなどを企画しており、司法改革の内容、特に裁判員制度について県民に考えて貰う企画にしたいとのことであった。
 また、昨年度と同じく、人権賞贈呈式、各委員会の展示・シンポ、無料法律相談会も開催したいと言うことで盛り沢山の内容になっている。従って、午後だけではなく、午前一〇時あるいは、一一時から始めることを予定している。
 また、各支部でもプレ企画を用意しており、小田原支部は裁判員劇を、川崎支部、相模原支部は、司法改革関連のシンポジウムを予定している。
4 会員集会が九月三日午後三時から予定されており、古川副会長から予定内容について詳細な報告があった。
 テーマは、四課題あり、第一が懲戒問題に関連して、事前公表制度を作ること、市民窓口を整備すること、第二は、当会の支部についての会則会規を制定すること、第三は、当番弁護士、国選事件の当番担当、法律相談担当の日程割り振りを一本化すること、第四は、総会の議決権について代理権行使をする際の要領の説明についてである。
 第一、第二のテーマについては、臨時総会を開き決定することになるが、その前に会員集会において会員の意見を十分に聞くという趣旨で企画されたとのことである。
(副議長 森 卓爾)
常議員からズバリひとこと
 今年度は、いよいよ司法改革「実現」の年といわれ、多数の立法作業が予定されている。そのために、日弁連も各単位会に多数の意見照会をしてくるが、送られてくる資料はいずれも大部で、これを理解し、意見を形成するには相当の時間を要する。その割りに意見照会の締め切りは非常に早い。
 速やかな「実現」に寄与したいと思う一方、「拙速」に加担しないよう心掛けたい。
第五〇期 金谷 達成

支部便り 小田原支部
法律相談開設を全ての町村に
 横浜弁護士会小田原支部管内の地方自治体は、六市(小田原、平塚、厚木、秦野、伊勢原、南足柄)、一一町(愛川、大井、開成、中井、松田、山北、箱根、真鶴、湯河原、大磯、二宮)、一村(清川)で、神奈川県の面積に占める割合は四五%にもなります。
 支部会員の事務所は、大磯、湯河原、二宮等の町にもあり、必ずしも市に偏在しているとは言えませんが、無弁市、無弁町村もあります。
 私は、あることから、各自治体における弁護士法律相談の実情を調査したことがあります。それによると、市においては回数や時間はともかくとして、弁護士による法律相談は、定期的に行われていますが、町村においては、一部では積極的に弁護士による相談業務が行われているものの、相対的には消極的であります。それでは、町村において、法律相談者が少ないかというと必ずしもそうではありません。箱根町という観光地温泉地を控えた自治体においては、数年前は法律相談は行われておらず、法律相談者は、わざわざ小田原まで下りてきて、相談を受けるという状態でした。ところが、数年前、法律相談が始まって、年三〜四回だったと記憶していますが、現在では、年一〇回、殆ど毎月行われ、殆どの回が定員を超えるという盛況ぶりです。法律相談を行っている他の町の担当者も、法律相談への需要の多さを語ってくれました。
 司法へのアクセスについて、様々な取組が行われているものの、弁護士あるいは法律相談に対するアクセスは、小田原支部管内でも充分とは言えないと思われます。
 小田原支部としては、今後、法律相談を設けていない町村に対して、その開設の計画の有無、開設の希望を積極的に問いかけていければと考えております。
 我々の経験でも、もっと早く相談に来ていれば、もっと違った結果になっただろうにという事例は多々あり、そのような苦い思いを相談者が味わうことがないように、我々も味わうことがないようにしたいと考えています。
(会員 内山 修一)

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