横浜弁護士会新聞

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2005年11月号(2)

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修習生3000人時代せまる! 個別指導担当の確保急務
司法修習委員会副委員長 小島 衛
  平成19年1月からロースクール(法科大学院)を卒業し、新司法試験に合格した新修習生が実務修習に入ります。他方、現行司法試験も実施されるので、平成18年度から24年度にかけて両方の修習が並行します。
 各地で行われる実務修習は、東京と大阪が、両方の修習生を引き受け、他会は現行か新のどちらかです。横浜は、平成18年6月から現行60期約100名を受け入れます(60期修習生は、約1500名、新1期修習生は、900名から1100名の予定)。
 横浜が、現行61期を受け入れるのか、新2期から新を受け入れるのかは未定です。しかし、受け入れる修習生の人数は約100名から徐々に増えて、合格者3000人時代には、128名となります。
 そこで、来年も含めて個別指導担当者の確保が急務になります(新修習では、弁護修習は2か月と短くなります)。会員皆様の絶大なご協力をお願い致します。

紛争解決センターでの解決事例報告(1) むずかしいケースでもあきらめないで 輿石 英雄
 初めてあっせん・仲裁人を担当し、和解が成立した事例を紹介したい(内容は少し変えてある)。
 事案は、A子からB男に対する婚約破棄に基づく慰謝料など400万円の損害賠償請求事件であった。申立前、A子がB男方に押しかけたりして2人の間がもめていた。
 B男の答弁は、性格の不一致による破談であって賠償義務はないが、解決金としてなら、130万円を月1万円の分割で支払うつもりはある、というものだった。A子の怒りが大きいのに対し、半額以下で、しかも月1万円の分割ではとうてい合意は無理だと思えた。
 しかし、不調により裁判を起こしても、時間も費用もかかるし(破綻原因も争われる)、賠償額も下がるであろうし、給料差押えにより結局は分割払いになってしまうことが予想されたので(B男に財産はなかった)、あまりA子にとってプラスは考えられなかった。そのため、A子の憤りの気持ちや訴えに時間をかけて耳を傾けるとともに、和解の場合は判決と同じ効力のある和解的仲裁判断を出す形を取りたい旨を説明し、A子に考えてもらった。
 他方、B男は、不調によるA子とのトラブルを心配していたので、金額を上げるとともに分割回数を減らして、この手続の中できちんと話をつけた方が良いのではないか、とアドバイスをした。
 その結果、第3回期日で、B男が一たん請求額全額を認めた上で、その内の250万円を月5万円ずつの分割で支払うという内容の和解的仲裁判断を出すことができた。
 あっせんの申立をするケースでは、法的手続を取るのに難しい点があったり、裁判や調停よりも早期の解決を求めていることが多いように思われる。従って、「和解はとても無理だ」と思われるケースでも、あきらめないで当事者の利益を考えてじっくり話を聞いていくことによって、解決に至ることも多いはずである。そのことをこのケースは教えてくれた。

新しいタイプの実務家出現へ エクスターンシップ本格スタート
法科大学院支援委員会委員 藤村 耕造
 昨年から今年春にかけ、横浜国大、関東学院大の法科大学院が、横浜弁護士会の協力のもと、エクスターンシップが始動した。
 今回は9月5日から横浜国大、桐蔭横浜大学、12日から神奈川大の合計約60名の学生が、本部、川崎、小田原の会員事務所に配属され、5日間の実務研修を行なった。指導担当を快く引き受けていただいた会員の皆様に深く感謝の意を表したい。
 担当された会員からは、「実務を吸収しようという意欲が感じられた」「事案を正確に把握していた」と好意的な評価が寄せられ、「弁護士活動を大雑把に理解してもらえたのではないか」「今後の勉学の一助となれば幸いである」等の感想をいただいた。
 今回私は既習者コース、未習者コース各1名の指導を2週間連続で担当することになった。
 既習者コースの学生には、医療事故訴訟の打ち合わせに立ち会ってもらったが、彼はすでに法科大学院で医事法の講座を受講し、ある程度の前提知識を備えていた。また、彼は従来の司法試験受験者が苦手としていた親族法、家事審判手続などにもある程度通じていて驚かされた。
 一方で未習者コースの学生は、他学部出身で社会人経験もあり、法科大学院で初めて法律を学び始めたそうだが、事実認定の場面で鋭い分析能力を示してくれた。
 今回の指導経験を通じて得たものは、従来と一風変わったタイプの法律実務家が生まれてこようとしているという実感である。
 理屈では前からわかっていたことだが、実際にそうした学生と接してみてあらためて新鮮な感覚を持った。
 人が変わり、システムが変わったとしても、マンツーマンの実地研修でなければ伝えられない技術、精神があることに変わりはない。
 これは倫理、実務の水準を維持する上で欠かせない。こうした観点から、会員各位に、エクスターンシップに今後とも協力いただければ幸いである。

専門実務研究会 紹介(4) インターネット法律研究会 サイバー弁護士育成中
飯田 直久 会員
 皆さんインターネットとは何かご存じでしょうか。インターネットは、全世界のネットワーク(コンピューターの集まり)を、相互に接続した巨大なコンピュータネットワークのことです。もともとは、米国防総省が、攻撃による危険を分散するため開発していた分散型コンピュータネットワークが商用利用されるようになったものと言われています。
 昔は、パソコン通信といえば「オタク」がやるものと決まっていましたが、ここ数年の間に爆発的にインターネットが普及し、今や、ネットを使えば、自分の机の上で夜中でも、ショッピングを楽しんだり、旅行や航空券などの予約もできる便利な時代になりました。オークションなどを通じて、個人間の取引も盛んに行われています。メールの普及も通信手段の大変革をもたらしました。顧問先とのやり取りなどにメールを活用している方も多いと思います。そのため、必然的に取引の形態(例えば契約の締結や決済の方法など)が変わり、またネットを悪用する者も出てくるなど、消費者保護や犯罪防止といった観点からも色々な問題が出てきました。
 当研究会は、このようなインターネットを巡る諸問題を法的な観点から研究し、これに対処するための法的知識、素養を身につける目的で発足しました。インターネットは「インターネット法」といった統一的な法律があるわけでないので、そこがこの分野の難しさかも知れません。場合によっては、著作権や各種取引の規制など幅広い法的知識が求められます。
 当研究会は、毎月1回開催し、これまでは50期代の若手会員に、経済産業省が公表している「電子商取引等に関する準則」やオークション取引を巡る問題点について、それぞれ2回に分けて解説して貰いました。今後は、判例研究等も行っていく予定でおりますので、興味のある会員は、老若男女を問わず是非ご参加下さい。

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