横浜弁護士会新聞

2006年3月号  −2− 目次

新所長にいんたびゅー
横浜家庭裁判所 稲田 龍樹所長
●ご出身・ご経歴などについてお聞かせ下さい
 東京都出身で、昭和44年中央大学を卒業、23期静岡修習です。初任地は札幌地裁で、その後、東京や青森、横須賀支部、大阪高裁などに赴任しました。実務一筋です。今回、札幌と千葉の家裁所長に続いて横浜家裁の所長となりました。
 家族は妻と子供が3人です。趣味は3年ほど前に始めたゴルフと音楽観賞です。音楽はジャンルを問わず好きです。近所の子どもたちの発表会なども好きです。プロとは違う良さがありますよ。
●これまでのご経験で感じられたことは
 若い頃、地方で仕事し、土地ごとにものの見方、考え方が違うんだと知り、裁判官として考えさせられました。
 北海道では本州各地の伝統が共存し、大阪では紛争の中に伝統や文化が息づき、関東とは異なりました。地域の実情を見て法を適用する謙虚さが必要ですね。
●家庭裁判所に期待される役割について
 家庭裁判所は、裁判所の中で独自の位置にあります。創設から60年弱を経て、定着しましたが、市民レベルではもっと理解を得られるように情報発信しなければと思います。
 家庭裁判所は、創設時から民とともに歩む伝統がありますが、司法改革の中で官民連携をもっと工夫したいですね。
●今後の抱負をお聞かせ下さい
 まずは、人訴事件が家裁に移管されて2年たちましたので、その成果を検討する時期にあります。市民が同一家裁で調停と訴訟を行うことにメリットを感じているか等です。
 次に、成年後見制度です。高齢者への振り込め詐欺の多発を見るとき、市民生活の基盤を整える必要は強いのです。ただ、われわれの意識は、家庭内に他人が入ることへのためらいが強く、意識改革も進めなければと考えています。
 3つ目は少年事件です。初発型非行への対策をより効果的に改善するため家裁は子どもといかに関わるか、一歩踏み出せればと考えます。
●横浜弁護士会へのご要望などお聞かせ下さい
 横浜弁護士会との関係はとても円滑であるという印象を受けました。また、お忙しい弁護士会の皆さんが男女共同参画社会実現のために重要な活動をされているのを知り感銘を受けました。
 今後も情報の共有に務めたいと思います。
 (聞き手=橋富雄副会長、佐賀悦子)

神奈川の司法支援センター(2) 捨石の会
日本司法支援センター 神奈川地方準備会 委員長 山下 光
 関弁連管内の支援センターの準備委員長は、情報交換の会議を持っている。その会の名が捨石の会である。長野準備会の宮澤委員長が付けた名前である。なんとなく、各地の準備委員長全員が司法改革の捨石になろうと思っている気持ちが解り、仲間意識が育ってきた。ところで、神奈川の準備状況であるが、26期の中村れい子会員を事務局長に迎えることができた。現在のところ全国で2人しかいない弁護士事務局長であり、支援センターの行く末は、非常勤の所長予定の小生より常勤の事務局長が握っているといってよい。幸いにして人を得たようである。
今後の課題
 ところで、支援センターは大事な問題で、方針が未確定であったり、会員の了解を得ていると思われない事項は多い。簡単に並べても以下のとおりである。
(1)法律扶助協会は解散予定であるので、同協会が実施していた自主事業(国選にならない被疑者や少年の事件、心神喪失者に対する事業)の継続。
(2)支援センターは、刑弁センターの議論を踏まえ、スタッフ弁護士を雇用しない。しかし、現在登録している当番弁護士の数では1人14件を負担しなければならないと予想される平成21年度以降の被疑者国選や200件弱と予想される裁判員裁判に対する体制の整備。
(3)扶助の相談受付から扶助決定までに約1か月半近くかかる現行の神奈川県における扶助制度の抜本的な改革。
(4)コールセンターが設置され、全国一か所で相談を受け付けることになるが、そこでなされる業務内容の確定。
以上でわかるとおり、いずれの事項も会員集会で議論を重ねる必要がある事項であるが、そのような時間はない。その他にも、弁護士会の法律相談センターとの提携、各士業との協力、支部ができない相模原・横須賀における対応などの課題がある。それどころか、地方事務所の意思を決定する運営会議の設置の可否、弁護士会との協議、市民や士業との連携を図る組織の運用等、会員の知恵と汗を必要としていることだらけである。私の願いは多くの会員が私と同じく捨石になってくれることである。

専門実務研究会 報告 商工ローン研究会 高利制限の画期的
最高裁判決が続く!
呉東 正彦会員
 商工ローンやサラ金等、債務者を様々な手段でがんじがらめに拘束して高利を取る貸金業者による多重債務の被害は、ますます広がっている現状の中、これに対する最近の債務者の救済手段と、最高裁を中心とした各判例の進歩は目ざましいものがあります。
 最高裁は平成15年7月18日にロプロに対し、子会社名下の保証料等も、利息制限法3条の利息とみなし、ある貸付で生じた過払金は別口の貸付に即時充当される、との判決を下しました。
 平成16年2月20日にはSFCGに対し、利息制限法を超える高利の取得を貸金業者に認める貸金業法43条につき、その適用要件の解釈は厳格でなければならないとしてその主張を否定する判決を下しました。
 平成17年7月19日には貸金業者の取引履歴の開示義務を認め、貸金業者が開示を拒絶したときは損害賠償義務を負うとの判決を下しました。
 平成17年12月15日には、リボ払いについても貸金業法43条の適用を否定する判決を下しました。
 そしてとうとう今年1月13日には最も頑強に43条の主張をするシティズに対して、期限の利益喪失特約によって債務者が事実上にせよ強制された支払いは任意とはいえない、また受取証書の契約年月日の記載を契約番号で代えてよいとする内閣府令は法の委任を逸脱し無効である、という画期的判決が出されました。
 1月24日には日掛業者に対しても、貸金業法43条の適用を否定する判決を下され、利制法による救済範囲は大幅に拡大しました。
 このような判例の進歩を勝ち取る原動力も、最新の情報交換や、集団的取組から生まれてきたと言って過言ではありません。
 私たちはこのような動きを踏まえ、毎回座長の茆原洋子会員の用意される豊富な実務資料をもとに、最新の情報も交換しながら、かつ参加者1人1人が毎日突き当たる初歩的な悩みやノウハウも交流しあって、研究会を行っています。また困難な事件などはサポート体制、集団的取組もしつつ、行政への働きかけや電話相談等にも取組もうとしています。若手の先生から、ベテランの先生まで、本当に幅広い方々が参加されており、毎回有益な情報交換がされています。是非お気軽に、商工ローン研究会にご参加下さい。
 次回研究会は4月12日午後6時から8時。お問い合わせは、茆原洋子会員(044−855−5414)または呉東(046−827−2713)まで。

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