横浜弁護士会新聞

2008年10月号  −1− 目次

消費者の視点に立つ行政へ ─7・11松沢県知事と面談─
 4月23日、福田康夫内閣総理大臣は、政府が設置した消費者行政推進会議において「消費者を主役とする『政府の舵取り役』としての消費者庁(仮称)を来年度から発足させる」という「消費者庁構想」を打ち出した。
 6月13日には、消費者行政推進会議から最終答申がなされ、これを受けた形で、政府は6月27日に、消費者行政推進基本計画〜消費者・生活者の視点に立つ行政への転換〜を閣議決定し、消費者の視点で政策全般を監視し、消費者を主役とする政府の舵取り役として消費者行政を一元的に推進するための強力な権限を持った新組織(仮称消費者庁)を創設し、必要な法整備を行い、平成21年度から発足させることとした。
 あわせて、政府は、消費者が頼れる分かりやすい一元的な相談窓口を整備し、また、国、地方一体となった消費者行政の強化のために、新組織の創設とあわせて、地方の消費者行政の抜本的な強化を図ることが必要であると地方の消費者行政の強化を要請した。
 一方、神奈川県では、平成8年度以降消費者行政予算が激減し、県の相談業務の多くが廃止され各市町村に移管されるなど、全国で最も大幅な行政予算及び人員の削減を行っている。
 当会は、県の消費者行政の改善は消費者庁が十全にその機能を発揮するために必要不可欠であるとの問題意識から、4月23日に仮称消費者庁構想が打ち出された後、5月9日の常議員会で「消費者が主役の消費者庁の実現を求める会長声明」を決議した。
 さらに、6月27日の閣議決定を受け、7月10日の常議員会で「地方消費者行政の抜本的充実を求める会長声明」を決議した。その執行として、直接地方行政の長である県知事への働きかけを行うべく、7月11日に武井共夫会長と松沢成文神奈川県知事の面談が実現した。県庁で行われた面談には、当会からは、武井会長、齋藤佐知子副会長の他、鈴木義仁消費者問題委員会委員長、同委員である城田孝子会員が同席した。
 武井会長は、上記会長声明を松沢県知事に手渡すとともに、消費者庁に対応した地方消費者行政を一括して管轄する新たな組織を県庁内に創設するよう要望した。また、鈴木委員長や城田会員からも、現在の神奈川県内の消費者問題や消費者相談の現状についての報告がなされ、松沢県知事や同席した県側の担当者と活発なやりとりがなされた。
 県の消費者行政についての問題意識は弁護士会側のそれと隔たりも見られたが、仮称消費者庁設立にあわせて新たな体制作りが必要であること、そのために当会と県で今後協議を継続することで一致した。 
 松沢県知事はテレビなどで拝見するとおり能弁で、当初の予定時間15分を超過して面談は終了した。
 面談の結果を受け、当会としては今が正念場として地方消費者行政の充実に向けて関係各機関にも一層の働きかけを続けていく方針である。

中高生が夏休みに司法の現場を体験 サマースクール2008
 8月25日、当会が主催して、中高生による司法の一日体験ツアー「サマースクール2008」が開催された。サマースクールの開催は昨年に引き続き2回目であるが、本年も応募者が殺到し、定員一杯の60名が参加する盛況ぶりであった。
 生徒達は、まず当会会館で「入学式」を行った後、模擬裁判や、本年新たに導入された法廷・法律事務所見学会、記憶の正確性テスト等のプログラムを受けた。
 法廷見学会では、横浜地裁のご協力により101号法廷を見学し、大型モニターやタッチペン等、裁判員制度に対応した新しい設備について質問が集中した。続く法律事務所見学会では、弁護士から事務所内の紹介や仕事の苦労・やりがい等の話を聞き、貴重な体験となったようである。
 その後、当会会館にて「記憶の正確性テスト」が行われた。これは弁護士と生徒が座談会を行っているところに、当会会員が扮した不審人物が突如乱入し、事前に知らされていない生徒達が事件の目撃者になって、退出後にその人物の特徴を証言してもらうという企画である。
 生徒達は、衣服や身長の特徴はかなり正確に捉えられたものの、ほっかむりをした乱入者の人相の細部や年齢等までは正確に知覚できなかったようで、乱入者の若手会員が素顔を見せると、生徒達からは「意外に若かった」、「同じ人かどうかは区別できない」等驚きの声が聞かれるなど好評であった。
 模擬裁判では、事後強盗致傷被告事件を題材として、生徒達が裁判官、検察官、弁護人の役に分かれ、法教育委員会委員の指導を受けながら本番さながらの公判手続を体験した。その後、4、5人の班に分かれ、争点である窃盗の意思の有無について評議を行ったが、被告人の所持品や犯行前後の行動を指摘しながら説得的に主張を展開するなど、プロ顔負けの充実した評議であった。
 最後の「卒業式」で生徒一人ひとりの名前を書き入れた卒業証書が手渡されると、生徒達は皆笑顔で受け取っていた。
 生徒のアンケートでは、「法廷・法律事務所の見学など、普段体験できないことができて感激した」、「弁護士が皆優しくて親しく話をしてくれた」、「今後も続けてほしい、来年も是非来たい」等うれしい声が多数寄せられた。
 サマースクールの模様は、翌朝の読売・朝日・日経の3紙(神奈川版)にも取り上げられるなど、法教育に対する社会の関心は極めて高く、弁護士会の果たすべき責任の大きさを感じた。法教育委員会としては、今後も意欲的な企画を打ち出していきたい。
(法教育委員会委員 入坂 剛太)

山ゆり
 「おたくの風鈴がうるさくて夜ねむれません。あたしたちはもう長いあいだ寝不足なのです。夏のあいだはがまんしていました。でも、もうそろそろとりこんでくださったらいかがでしょう…ある日、こんなはがきがぼくのへやにとどいたのでした…」安房直子さんの「秋の風鈴」という童話の一節である
 「LAWより証拠」の著者の平塚俊樹氏によると、このような近隣トラブルは法律による解決が難しく、多数派を味方につけることがコツだそうである。ところが同氏によると、最近は原因者側にも「法律屋」がつくケースも多く、このことがかえって問題の解決を難しくしているのだそうだ
 先ほどの風鈴の話であるが、主人公が思い入れのある風鈴をそのままにしておいたところ、苦情の手紙は日に日に増え続け、ポストが手紙の束の重みで落下してしまう始末に…。10月のある日、堪りかねた主人公が風鈴を片づけたところ、庭には待ち焦がれたようにコスモスが咲き乱れた。主人公は、あの手紙がコスモス達からのものであることに気づき温かい気持ちになったのだった… コスモス
 実際のトラブルもこのようにハッピーエンドに終わるとよいのだが…。
(堀之内 和英)

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