横浜弁護士会新聞

2008年10月号  −3− 目次

常議員会のいま おやじも淑女も議論が熱い
会員 若田 順
 今年度の常議員会は、本原稿執筆の時点で5回開催されている。かなり議論があったものを紹介する。
横浜弁護士会災害対策委員会の設置
 新規に委員会を設置するというが、日頃どのような活動を行う予定なのか、そもそも設置の必要な委員会なのかとの意見。執行部において再検討して次回以降に提案し直しとなる。災害はいつやってくるかもしれないので、日頃の準備が大事という趣旨により、最終的には無事可決した。
横浜弁護士会表彰及び慶弔に関する規則制定
 共済制度の大幅縮小が先の総会で決まったが、今後も存続が予定される表彰・慶弔制度のうち、結婚祝金制度について議論が交わされた。会員が結婚すると2万円の結婚祝金がもらえるが、婚姻後3年以内の申請に限定するとの取扱いを明文化する規則案が上程された。結婚祝金という制度自体不要ではないかという想定外の意見も出され、議論が伯仲したが、僅差で、制度存続と3年以内の申請という執行部提案が可決された。仮に結婚祝金が廃止されると、当会においては慶弔の慶の部分は完全に無くなってしまうが、これではあまりに寂しいということか。
 以上議論の一端をご紹介したが、とにかく「おやじ達」(失礼)(もちろん淑女の先生方も)の議論が熱い。先輩会員など物怖じもしない若手中堅会員、現理事者に遠慮する様子は皆無の元会長・副会長クラスの面々。執行部にとってはある意味怖い。ただ、このような熱い議論を聞いていると、「弁護士っていいよね」と感じるのは私だけであろうか。
 ともかく、星野議長、毎回お疲れ様です。

理事者室だより6 まさしく今が時代の転換点
副会長 工藤 昇
 来年5月21日から、いよいよ裁判員裁判が開始されます。単位会の中には延期決議をあげたところもあり、近時は国会でも延期を求める動きがあるようで、先行きはやや不透明になってきたようにも思いますが、私は、裁判員裁判に強い期待を抱く者の1人です。
 確かに、いろいろな問題を抱えての船出になるかもしれません。私自身、模擬裁判でうかがい見た評議の様子に、その場のムードで簡単に結論が流されかねない、どちらにもぶれかねない非常な危うさを感じざるを得ませんでした。実際、特に量刑面の判断が大変厳しいものになるおそれは多分にあるのではないかと思います。
 しかし、少なくとも、これまでよりは、弁護士にとってやりがいのある裁判が行われる可能性があります。これまで、どれほど必死に被告人の無実を訴えても、木で鼻をくくったようにはねつけられてきた経験をお持ちの方は多いでしょう。裁判員は、柔軟な判断が期待されるだけ、弁護人の努力や意気込みが伝わる余地が大きいとも言えるのではないでしょうか。
 大変な裁判になることは間違いないと思いますが、個人的には、極力楽観的に、昔はまった映画「アラバマ物語」や「情婦」の主人公になったつもりで、裁判員裁判を楽しんでやろうと思っています。
 最後に、オリバー・W・ホームズ判事の言葉を。「ひとは時代の激情と行動とに参加しなければならぬ、さもないと、彼は後世、その時代に生きていなかったのだと判断されても仕方がない」。
 刑事裁判について言えば、まさしく今が時代の転換点です。皆さんも、ぜひ、積極的に裁判員裁判にご参加いただき、ご自身の肌で、この時代の動きを感じてみてください。

新こちら記者クラブ 新制度の行く先
 「弁護士を目指すことにした。会社は辞めるよ」
 先日、仕事でお世話になった40代半ばの同業の先輩が、会社を早期退職し都内の私立の法科大学院へ入学、第二の人生へと足を踏み入れた。もともと学究肌の先輩だったが、小さな子どもや住宅ローンを抱えての大きな決断に、正直驚かされた。
 国民が司法に参加するという「裁判員制度」のスタートがいよいよ来年5月に迫っている。裁判所を訪ねれば、ポスターがあちこちに張られ、制度を紹介するビデオが繰り返し放映されるなどPRに余念がない。
 裁判員制度をはじめ法曹教育の拡充など一連の司法制度改革は大詰めの時期に来ていると感じるようになった。
 しかし、取材で接する法曹関係者からは疑問の声が相次いで聞かれる。「裁判員に本当に人を裁くことができるのか」「新しい弁護士たちは就職難らしいよ」などと手厳しい。
 身近なところでも、旧来の司法試験を受験し続けた知人が、「法科大学院の登場で不利益をこうむった」とこぼしていた。どんな改革にもひずみは付いて回るものだと思う。ただ、報道に携わる我々は、新制度のどこにひずみや問題があるのかをチェックし続け、読者に提示していくことが求められているだろう。今後の裁判・司法取材では、この視点を持ち続けていきたい。
 もちろん、激変する法曹界へ身を転じた先輩の行く先も見守り続けていくつもりだ。
(日本経済新聞 佐藤 信博)

前のページへ 次のページへ

<<横浜弁護士会新聞メニューへ