横浜弁護士会新聞

2008年10月号  −4− 目次

インドからの手紙 裁判期日に時刻の指定なし! インド裁判傍聴記
 今年1月からインドの首都ニューデリーで暮らしている。この度、山口弁護士会の友人らと共に、デリー高等裁判所で裁判傍聴をした(同弁護士会会報には共同で報告記事を書いた)。案内役は、フォックスマンダル・リトル法律事務所の若手女性弁護士、アールティ・ラジャン氏だ。同弁護士は、黒いスーツに白シャツ、弁護士専用の白タイを着用。弁護士は、法廷では、この服装が義務付けられているとのこと。
 裁判所に入るとまず目に飛び込んでくるのが、中央にある巨大な電光掲示板。掲示されているのは、各法廷で現在審理中の事件。審理予定の事件に付される通し番号が、法廷番号の横に赤い電光文字で表示されている。銀行待合室の電光掲示板のイメージか。
 そもそも何故このようなものが必要なのかというと、インドの裁判期日は時刻の指定がない(!)ため、自分の番が近づくまで法廷外で待機する必要があるからだという。更に驚くべきことに、結局順番が来ないで翌日以降に期日が持ち越されることもしばしばだとか。インドの弁護士は、いつ来るともしれない(というか、来ないかもしれない)出番を待ち続けないといけないのである。そのせいか、電光掲示板前のソファは順番待ちの弁護士であふれている。
 私たちはラジャン弁護士の担当事件が行われる予定の第23号法廷に入場した。この法廷では民事裁判の「ヒアリング」と呼ばれる手続きが行われていた。法壇の上には裁判官1名。原告及び被告(代理人)は法壇前に立ち、裁判官に向かって主張を展開する。
 裁判は、(インド訛りの)英語で行われていた。原告側・被告側の代理人は、裁判官を指差したりなどしながら勢いよく主張を展開。「国際会議の議長の役目は、日本人を喋らせることとインド人を黙らせること」というジョークがあるそうだが、なるほどこちらの弁護士はよく喋る、と感心する。しかし、裁判官はそれ以上に強烈だ。
 ある場面では、原告代理人が土地の所有権は原告にあると主張し、その証拠を3つ挙げていた。被告代理人が「そんな証拠、いくらでも偽造できる」と訴えかけたところ、裁判官は「そんなわけないだろう!」と一喝。あからさまな心証開示に驚いた。
 裁判官がたびたび主張を遮るので、両代理人とも最後まで言わせてもらおうと必死だ。「ノー」を連発する代理人に対し、「ノーノーなんて言うんじゃない!」と裁判官が遮る場面も。怖い・・・。インドの弁護士は気が強くないとやっていけないと思う。
 ラジャン弁護士の順番はまだ来ていなかったが、時間の都合もあり1時間ほどで退場し、この日の傍聴を終えた。
 それにしても、弁護士の待ち時間の長さには驚いた。ラジャン弁護士の手持ちの事件も、この日は期日の延期を求めるだけの予定で始まれば2分程度で終わるのに、今日中に順番が回ってくることすら保証の限りではないと言っていた。インドで弁護士をするには、気の強さと巧みな話術、そして相当の忍耐力が必要のようだ。
(元横浜弁護士会会員 本多 麻紀)

私のホビー 私が走る理由
会員 鈴木 健
 この欄で取り上げていただくのにふさわしいほどの実績かどうかは分らないが、事務所メンバーを中心に毎年草駅伝大会に3回、フルマラソンはかれこれ11回出場している。
 私が走る理由その一
 弁護士として日々の仕事に忙殺されていると、いつしか、自分が何をしたくて弁護士になり、今後どういう目標に向かって行こうとしているのか分からなくなるときがある。そのようなとき、走っている間は他のことはできないから、その日あったことを振り返りながら自分の立ち位置を確認し、明日から自分が何をすべきかについてゆっくり考えることができる。かつて西田幾多郎は歩きながら思索に耽ったというが、私にとっては、山下公園とその行き帰りの道が「哲学の道」である。最近、風貌も哲学者風になってきたと言われている。
 私が走る理由その二
 弁護士として分け隔てなく事件を受け、質の高い仕事を目指そうとすればするほど、業務量は多くなり、勢い運動不足になりがちであるし、また、定時に家に帰って食事を摂ることなど到底望めなくなる。普通に外食するだけでもカロリー摂取過多となるところ、各種委員会や弁護団会議後の打ち上げへの参加が多くなることが、さらに拍車をかける。結果、修習生時代や新人の頃と比べ、人物の同一性を欠く者が少なからず出てくることになる。
 一方、食べたいものを我慢すると、それはそれでストレスになるので、適当に運動しつつ、食べたいものはあまり我慢しないことが精神衛生上好ましい。
 筆者は最近、最大64キロあった体重を、学生時代の59キロに落とすことに成功した。5キロ違うとやはり軽いし、走っていて快適である。それに伴ってか、キャラクターも段々軽くなり、最近オヤジギャクを飛ばすことに、昔ほど抵抗がなくなりつつある。
 結局、弁護士稼業にとって走ることは、身体的にも精神的にも最もよいというのが私の結論である。
 次回は、11月8日(土)JR西立川駅前昭和記念公園で行われる駅伝大会に参加予定なので、興味のある方は、馬車道法律事務所045(662)7126まで。

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編集後記
 いつ始まるか分からないインドの裁判所、いいですね。あまりにも正確、精密すぎるものは息が詰まります。「アバウト」ということは、人の優れた特性なのです。でも、弁護士の拘束時間が長くなる以上、弁護士費用は高くならざるを得ません。金持ちしか裁判を利用できないのでしょうか?
デスク 安田英二郎  1面担当 堀之内和英  2面担当
須山 園子
     3面担当 両角 幸治  4面担当
山田 一誠

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