横浜弁護士会新聞

2011年5月号  −3− 目次

ひまわりホットダイヤル アクセス障害解消に向け、相談担当者を増員
 平成21年11月、日弁連中小企業法律支援センターが設立され、その活動の一環として、昨年4月より、中小企業経営者のためのコールセンター「ひまわりほっとダイヤル」の運用が全国的に開始された。弁護士が組織的かつ全国的に法的サービスの提供を行うことができる体制を構築し、中小企業経営者の弁護士へのアクセス障害を解消することを目的としている。
 ひまわりほっとダイヤルにおいては、全国の各都道府県内の相談者から全国共通専用ダイヤル宛に架電されたものが、NTTの自動電話転送システムにより、各都道府県の弁護士会窓口へ自動転送され、弁護士会窓口から相談担当者に即日配点される。配点を受けた相談担当者は、原則として当日中に相談者と連絡を取り、速やかに相談の日程を調整する必要がある。また、「初回面談30分無料」という昨年からの無料相談キャンペーンは、今年9月末まで継続されることになっている(一部の弁護士会を除く)。
 ひまわりほっとダイヤルの相談担当者として登録するに当たっては、上記のような目的、運用、配点方式等を十分に理解いただくため、毎年開催される説明会への参加が不可欠である。今年の説明会は、3月22日及び25日に当会会館にて開催され、運用マニュアル、配点連絡票等の資料をもとに、弁護士業務改革委員会の委員である畔柳秀勝会員(22日)、飯島俊会員(25日)による説明が行われた。
 現在、すでに73名の会員が相談担当者名簿に登録されているが、新たに61名の会員が今回の説明会に参加し、名簿に追加されることになった。神奈川県下に数多く存在する中小企業のニーズに幅広く応えるため、従前より、各支部所属の会員、専門分野の担当が可能な会員の確保が課題となっている。テレビ会議システムによる説明会の各支部への同時中継(今年は震災の影響により急遽中止)、各専門実務研究会宛に説明会への参加を呼び掛ける等の対策を、今後も継続して行っていきたいと考えている。
(会員 小林 俊介)

新こちら記者クラブ 東日本大震災〜メディアの現場から
 3月11日14時46分。緊急地震速報のアラームが鳴り響く。横浜の記者クラブで原稿を書く手を止めた。まもなくして大きな揺れが襲ってきた。手持ちのビデオカメラを手にして、弾かれたように外に出る。向かいのビルが巨大なコンニャクのように揺れていた。「横浜に大きな地震が来た」急いで記者クラブに戻りながら、頭に“東海地震”がよぎっていた。しかし、テレビに映し出されていたのは東北地方の信じられない光景だった。「これは映画だろうか」渦を巻く海。流されていく家屋。現実のものとは思えなかった。
 10年前。まだ大学生だった頃に、海の向こうで旅客機がビルに突っ込んだ。寮で遅い朝ごはんを食べながら「どうして朝から映画をやっているのだろうか」と思っていた。それがアメリカで現実に起きていることだとわかり、恐怖と無力感に襲われた。
 記者になった今、あの時に似た無力感を感じている。一体、自分には何ができるのだろうか。何を伝えるべきなのだろうか。現地では懸命の捜索が続いている。原発は予断を許さない状況だ。中では数百人の作業員が過酷な労働下にある。千葉県に住む兄は、地元の仲間と協力して6000人分の炊き出しを福島で行ったという。
 この原稿は、今から2か月後に掲載される。そのころ東北は、原発は、どうなっているのだろう。自分には何ができるのか。答えが見つからないまま、現地取材の希望届を書いた。
(TBSテレビ記者 吾津 洋二郎)

鶴藤先生講演報告 知っていますか?債権法改正
 3月2日、神奈川大学法科大学院の鶴藤倫道教授の講演会が当会会館にて行われた。「債権法改正に向けての債務不履行法の体系的位置づけについて」と題した2時間にわたる熱のこもった講演は、法制審議会民法(債権関係)部会で現在進められている債権法改正に関する議論における中心的テーマである債務不履行法の枠組みについて、現在の学会での議論状況や比較法に触れる貴重な機会であった。内容を逐一紹介する紙面はないため、印象に残った点を二つ取り上げたい。
 一つは債務不履行責任の帰責事由の考え方である。近時は、帰責の根拠を過失責任ではなく、「契約は守られねばならない」という契約の拘束力におく考え方が有力であり、それによれば、免責事由は契約における想定外の事由(債権法改正検討委員会の立法提案における表現では「契約において債務者が引き受けていなかった事由」)という考えになるそうである。
 例として、ある品物を届けるという運送契約を締結したものの、履行期に台風が来たため届けられないという場合、台風の到来が想定外なのであれば免責事由となるが、天気予報で知っていた上であえて契約を締結したのであればそうならない、ということであった。
 なるほどとも思えるが、なお違和感を拭えない。これまで「無過失」は規範的要件とされ、評価根拠事実及び評価障害事実の総合考量によって評価されていた。契約締結時の予測状況だけではなく、履行期における被害状況、代替措置の有無、債務者の払った努力など諸事実が総合的に考慮されるように思われるが、これらは考慮外となるのだろうか。
 もう一つは、契約解除における解除の趣旨、目的から説き起こされる要件論である。フランス民法との比較だけでなく、ドイツ民法の起草過程をおっての変化を分かりやすくご説明いただくという、ドイツ法のこの分野を専門に研究されている鶴藤教授ならではの内容だった。
 たとえば、ドイツ民法典の立法過程においては、解除の根拠を債権者にとって履行を受ける利益が消滅していることに求める考えが支配的であり、全部不能の場合、帰責事由は解除の要件として不要と考えられていた。にもかかわらず、実際の立法において帰責事由が要件とされたのは、危険負担との峻別に必要との考えに加え、解除が損害賠償と同一要件のもとでの選択的な権利とされたことによるとのことであった。
 このようなお話を伺って、あるべき規定の具体的内容に関する論議も大切だが、危険負担や瑕疵担保など他の制度との関係も深い分野だけに、制度趣旨、他の制度との切り分けなど、基本を見据えた論議の必要性を痛感した。
 司法制度委員会では、今後も県内の法科大学院の研究者等の講演会などを通じて情報提供に努めつつ、当会としての意見集約に励んでゆきたいと考えている。各会員におかれては、日々の業務等を通じて関心をお持ちの論点につきご意見を積極的に表明していただければ幸いである。
(会員 石原 隆)

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