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遥かなる古代ギリシャとの出会い

2014年10月06日青木 亮祐弁護士

1 古代ギリシャとの出会い

昨年秋、忙しさから欝々とした気分にあったある日、気分転換を兼ねて事務所近くの本屋に行きました。そこで、あまりにもおびただしい量の本が並んでいるのを見て、「世の中に、これほど本が必要なのか」「読むに値する本はこんなにないはず」と思い、幾年を経てもいまだに読み継がれている本を読もうと考え、岩波文庫の棚へ向かいました。
そこで手にしたものが、古代ギリシャ人で「歴史の父」と後にローマ人キケロに評される、ヘロドトス(紀元前485年~前425年)の書いた『歴史』でした。
古代ギリシャには以前から興味があったのものの、その時は、オリュンポスの神々やトロイア伝説を中心としたギリシャ神話、パルテノン神殿をはじめとする優麗な建造物、美しいエーゲ海とその島々といった漠然としたイメージしか持っていませんでした。『歴史』を読み始めたとたん、多彩で興味のわく当時のヨーロッパ・小アジア地方の風習や出来事が綴られており、当時の情景がありありと目に浮かぶようで、一気に引き込まれました。一読して分かったことは、古代も、悠久の歴史を経た現在も、人間の本質は何一つ変わってはいないということでした。私は、人間の本質を古代ギリシャという場を用いてもっと見つけたいと思うようになり、ホメロスの叙事詩である『イリアス』と『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統紀』と『仕事と日』、『国家』をはじめとするプラトンの対話編作品、ソポクレスの悲劇作品『オイディプス王』(いずれも岩波文庫)など、古代ギリシャを代表する作品を次々と読むようになりました。

2 不死なる神々と死すべき人間

古代ギリシャの作品を読み進むにつれて、これらの作品にはひとつの通奏低音とでも呼ぶべき特徴があることが分かってきました。それは、人間は必ず死ぬものであり、限界があり、絶えず運命に左右される存在である、ということです。
古代ギリシャにおける神託所であったデルフォイの神殿には、「ΓΝΩΘΙ・ΣΑΥΤΟΝ」(「汝自身を知れ」)との文字が彫り込まれていたとのことですが、「汝自身を知れ」というのは、自分の個性を知れ、本当の自分を知れ、という現代的な意味ではなく、死すべき人間にすぎないことを知れ、身のほどを知れ、という意味を持っていたのだそうです。実際、古代の作品中では、オリュンポスの神々と人間が、「不死なる神々と死すべき人間たち」と形容されているのをよく見かけます。
古代ギリシャにおけるバイブルともいうべき『イリアス』は、ギリシャ連合軍とトロイア軍との戦いの様子を描いた叙事詩ですが、そこでは、神々(特にゼウス)のその時々の気分や意向により勝敗と戦いの過程が既に定められたレールの上で、その敷かれているレールの到着先を知らない死すべき人間たちが、勝利と栄誉を得るために苦しみあえぎつつ、戦いを重ねる様子が迫真さをもって綴られています。もっとも、そういう人間の運命に対して絶望感が漂っているわけではなく、死すべき定めの中であがき続ける人間に対する、優しい眼差しを感じられます。

3 ヘレニズムという言葉

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ところで、みなさんは「ヘレニズム」と言う言葉を覚えておられますか。世界史の授業の最初の方で出てきた単語だと思います。古代のギリシャ人は、自分たちの土地を、「ギリシャ」ではなく、「ヘラス」と呼び、自分たち自身のことを「ヘレネス」と呼んでいました。紀元前325年ころ、ギリシャ北部のマケドニア王国のアレクサンドロス大王が、ギリシャ本土とエジプト、メソポタミア地方、さらにインダス川に至るまでの東方を勢力下におさめ、一大帝国を築きました。
その結果、ギリシャ文化が東方に伝わり、当時知られていた「世界」がギリシャ化したのです。つまり、ヘレニズムとは、「世界のギリシャ化」ともいうべきものでしょう。実際、その後東地中海を中心とする国際公用語はギリシャ語でしたし、ギリシャやパレスチナがローマ帝国下に入り、その後キリスト教が誕生した際、もっとも有名な書物となる新約聖書は、もともとローマ帝国の公用語であるラテン語ではなく、国際公用語であったギリシャ語で書かれています。

4 古典ギリシャ語

こういった古代ギリシャの偉大さを知ってくると、どうしてもその当時に使われた言語に関心が向かわざるをません。
現在、私は、週に一度、横浜駅近くの朝日カルチャーセンターが主催する、古典ギリシャ語教室に通っています。教室では、老若男女、様々なバックグラウンドの方々が10数人集り、みな積極的に受講をされています。特に、既に現役を引退された方々が意欲的に授業に参加されているのは目を見張ります。教室のメンバーで、古典ギリシャ語の先生を交えて懇親会を開きましたが、そこで占めた話の内容は、古代ギリシャであり、中世終りに興った古代の再発見を意味する、ルネッサンスでした。参加者の方々はみな知識が豊富で、私の目の前に座られた70代後半の女性から、アラビア世界がいかにヨーロッパのルネッサンス開花に寄与したのかを説明を受け、知的好奇心が最高潮に高まり、年齢の差を感じさせない、愉しい時間を過ごすことができました。
これからも、古代ギリシャを通じて、人間というものの奥深さを、引き続き再発見して参りたいと思います。

執筆者情報

弁護士名 青木 亮祐
事務所名 横浜プロキオン法律事務所
事務所所在地 横浜市西区岡野1-12-18 ペレネAi501号室
TEL 045-550-4984
FAX 045-550-3584
メール aoki@yokohama-procyon.jp
ホームページ http://yokohama-procyon.jp

 

 
 
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