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相続問題

 

1 遺言作成

私が死んだ後、妻にはマンションと預金を、息子には株式を遺産として渡そうと思うのですが、どのような方法がありますか。

一般的には、①遺言者自らが遺言の全文、日付及び氏名を自署し、印を押して作成する自筆証書遺言と②公証人に作成してもらう公正証書遺言とが代表的な方法です。
また、遺言内容を秘密にしたい場合には、上記二つの遺言を合わせたような秘密証書遺言という方法もあります。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言では、費用面・遺言書の保管システム等の面において、それぞれメリットとデメリットがありますが、詳細については、弁護士にご相談下さい。

妻と息子二人がいますが、遺言ですべての財産を長男に譲りたいと思っています。このような遺言を作成することは可能ですか。

もちろん、すべての財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言を作成することは可能です。
しかしながら、このような遺言の結果、妻と次男の遺留分を侵害することになってしまいますので、相続が発生した後、妻と次男から長男に対し遺留分減殺請求がなされ、新たな紛争が生ずる可能性があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法定相続分の一部を保障するもので、遺留分の相続財産に対する割合は、直系尊属のみが相続人の場合には3分の1、それ以外の場合には2分の1となっています。
したがって、遺言内容が他の相続人の遺留分を侵害する可能性のある場合には、事前に弁護士にご相談のうえ、遺言書を作成されることをお勧めします。

一度作成した遺言を書き換えることはできますか。

可能です。
遺言者は、いつでも遺言の方式にしたがって、その遺言の全部又は一部を撤回することができます。これらの撤回をした上で、新たな内容の遺言を作成すれば、遺言の内容を変更することができます。
また、前の遺言と抵触する内容の遺言を新たに作成した場合には、抵触する部分については前の遺言を撤回したものとみなされます。
現実には、新たな遺言を作成し、その中に前の遺言は撤回する旨記載しておく方法が確実といえます。
なお、自筆証書遺言の場合には、上記の方法以外に加除・訂正の手続があります。ただ、この方法をとる場合には、「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」との厳格な手続が要求されていますので、注意が必要です。詳細については、弁護士にご相談下さい。

父が亡くなったのですが、遺言が存在するかどうかを調べる方法はありますか。

原則として昭和64年1月1日以降に作成された公正証書遺言については、日本公証人連合会でデータベース化されており、必要書類を揃えた上で最寄りの公証役場に問い合わせれば、遺言作成の有無及び保存している公証役場が分かります。
秘密証書遺言についても、遺言作成の有無・年月日については上記と同様の方法で調べることができますが、保存場所は直ちには分かりません(遺言者本人が保管するため。)。
このように、自筆証書遺言と秘密証書遺言については、保管場所がすぐに分かるような制度はありませんが、生前に付き合いのある弁護士等が預かっている場合もありますので、確認してみると良いでしょう。

亡父の机から「遺書」と書かれた封筒が見つかりました。開けて中身を見ても問題ありませんか。

封を開けずに家庭裁判所に提出して検認請求をする必要があります。
民法では、公正証書遺言以外の遺言について、その偽造等を防止するため、「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。」とされています。
したがって、遺言書らしき封書を発見したのであれば、家庭裁判所にて遺言書検認の手続をとる必要があります。
この検認を怠ったり、検認を得ないで遺言執行をしたり、無断で開封してしまった場合には、5万円以下の過料に処せられる場合があります。
なお、この検認手続は遺言書の検証を行うものにすぎず、遺言内容の有効性を判断するものではありません。したがって、検認を得たものであっても、明らかに偽造である等の事情がある場合には、別途その有効性を争うことは可能です。

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2 相続人

夫が亡くなりました。子はもうけていません。相続人となるのは誰ですか。

民法では相続人の範囲、順位、相続分等を定めています。
民法上、配偶者は常に相続人となります。
配偶者以外には、①子(代襲相続人を含む)、②直系尊属、③兄弟姉妹(代襲相続人を含む)が、これらの順序で相続人となります。
法定相続分はそれぞれの場合で変わってきます。配偶者と子が相続人の場合は配偶者が2分の1・子が(合わせて)2分の1、配偶者と直系尊属が相続人の場合は配偶者が3分の2・(合わせて)直系尊属が3分の1、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は配偶者が4分の3・兄弟姉妹が(合わせて)4分の1となります。
ご質問のケースでは、まず配偶者たる妻(ご相談者)が相続人となります。また、子をもうけていないということですので、夫の両親が相続人となります。夫の両親ともすでに死亡しているという場合には、夫の兄弟姉妹(代襲相続人である甥・姪含む)が相続人となります。
夫に両親も兄弟姉妹(甥姪含む)もいないというのであれば、妻が唯一の相続人ということになります。

30年以上連れ添った内縁の夫が亡くなりました。私にも相続権はありますか。

民法上相続権が認められているのは、有効な婚姻関係を有する「配偶者」であり、内縁の妻は「配偶者」には含まれません。したがって、相続権はないということになります。
もっとも、被相続人(内縁の夫)に相続人が存在しない場合には、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」の請求により、家庭裁判所は相続財産の全部又は一部をその者に与えることができるとの制度があります。内縁の妻として長年連れ添ったというのであれば、この「特別の縁故があった者」に認められる可能性はあります。
また、民法上「配偶者」と認められない場合でも、遺族年金等において、社会保障上は配偶者と同様の扱いを受けられる場合があります。

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3 遺産の範囲

夫が亡くなり生命保険金を受け取りました。この保険金も遺産分割で他の相続人に分けなければならないのですか。

保険契約上、受取人として特定の者(例えば、夫や妻)が指定されていたり、「相続人」との指定がされている場合には、保険金請求権はあくまでもその契約により受取人が取得した固有の権利であり、被相続人から相続により取得したものとは異なると考えられます。
したがって、これらの場合には生命保険金請求権は相続財産には含まれないとされています。
もっとも、通常生命保険金が多額に上ることから、相続人間の不公平を是正するため、これを「特別受益」として扱い、相続分を修正する例もあるようです。このような扱いをするかどうかは、個別具体的に判断されることになります。
なお、民法上は上記のとおりですが、税法上は被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。

亡夫には銀行に対して3000万円の借金があります。相続人は妻である私と二人の息子です。負債はどのように相続されるのですか。遺産分割で私がすべて負債を負うようにすることはできますか。

相続人は、相続により被相続人の権利(財産)のみならず義務も承継することになります。したがって、被相続人の負債も相続の対象となります。 もっとも、負債が多額に上る場合には、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に限定承認(相続により得た財産の限度において相続の承認をする方法)や相続放棄(被相続人の権利義務を一切受け継がない方法)により対応する方法があります。
単純承認により相続した場合、被相続人の負債は相続分に応じて負担することになります。そして、金銭債務の場合には、「可分債務」(分割が可能なもの)となりますので、相続により当然に分割され、各相続人が相続分に応じて負担するになります。ご質問のケースですと、亡夫が負っていた3000万円の負債については、妻が1500万円(相続分2分の1)、子がそれぞれ750万円(相続分各4分の1)の負債を負うことになります。
なお、遺産分割により、上記と異なる負担を決めることはできますが、債権者の同意がなければ、あくまでも相続人間の取り決めにすぎないことになります。
したがって、銀行が息子に請求をしてきた場合、息子は遺産分割により異なる合意があることを主張しても自分の承継した部分(750万円)について請求を免れることはできません。

父が亡くなりました。父の自宅には祖父母の位牌や仏壇があり、また先祖代々の墳墓があります。これらについても他の財産と同様に遺産分割で承継者を定めるのですか。

民法上、系譜、祭具及び墳墓の所有権に関しては、遺産分割にはなじまないとの考え方から、特別の規定があります。
被相続人により遺言等により祭祀財産の承継者の指定がなされている場合には、その指定された者が承継することになります。
指定がない場合には、慣習に従って承継者を定めることになります。慣習によっても定まらない場合には、家庭裁判所に審判を申し立て、承継者を定めてもらうことになります。

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4 相続放棄

夫が亡くなりましたが多額の負債があるので相続放棄をしたいと思います。手続を教えてください。

相続が開始した場合、相続人は、①単純承認、②限定承認、③相続放棄の3つの方法を選択することができます。相続放棄とは、被相続人の権利や義務を一切受け継がないというものです。
相続を放棄しようとする場合には、その旨を家庭裁判所に申述しなければならないとされています。
具体的には、自分の戸籍謄本、被相続人の除籍(戸籍)謄本及び住民票除票等の必要書類を添えて、「相続放棄の申述書」を管轄の家庭裁判所(被相続人の最後の住所地の管轄裁判所)に提出することになります。
相続放棄には期限があり、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行う必要があります。
なお、3ヶ月以内に相続を放棄するかを判断する資料が得られない場合には、家庭裁判所に対してその期間を伸ばすように申し立てることができます。

夫が死亡後1年経ってから銀行から内容証明郵便が届き、破産した知人の連帯保証人になっており、多額の連帯保証債務を負っていることが分かりました。夫には財産も負債もまったくないと考えていたため、相続放棄の手続はしていません。今からでも相続放棄できますか。

相続放棄には期限があり、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行う必要があります。
この「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時を指すものと考えられています。
そうすると、ご質問のケースでは相続放棄が不可能とも思えます。
しかしながら、この点について例外を認めた判例があります。上記各事実を知った時から3か月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、例外的に3ヶ月の期間期間については、「相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時」から起算すべきものとしています(最高裁昭和59年4月27日判決)。
したがって、ご質問のケースでも、(夫の死亡時ではなく)銀行からの内容証明郵便を受領した日から3ヶ月以内であれば、相続放棄が認められる可能性があります。早急に弁護士にご相談されると良いでしょう。

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5 遺産分割

遺産の分割について兄弟と話合いたいのですが、どのような手続を踏めば良いですか。弁護士を頼んだ方が良いのですか。

遺産分割とは相続人が複数いる場合に、相続人全員で遺産を具体的にどのように分けるかを決める手続です。民法では法定相続分が定められていますが、誰が何をどれだけ相続するのかについては、遺産分割の手続を経て決まることになります。
相続人全員での話合いで決められない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停の手続や遺産分割審判で決めることになります。
話合いでの解決が困難と思われる場合、相続人の一人が所在不明である等の場合は、取り敢えず、弁護士にご相談下さい。また、相続人間での争いが予想される場合については、話合いを始める前の段階で弁護士に相談しておいた方が安心です。
弁護士に依頼した方が良いかは、法律相談を受けた後に、弁護士の意見も参考にして決めても遅くはありません。

兄は亡父から生前自宅土地建物の購入・建築資金に充てるために2000万円をもらっています。このような場合でも兄とは遺産(8000万円)を等分に分けないといけないのですか。

兄が「特別受益者」に該当する場合、相続分は修正できます。
民法には、相続人間の不平等を避けるため、相続分を修正する制度が設けられています。特別受益者の相続分に関する規定もその一つです。
共同相続人の中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者がいる場合には、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなした上、当該相続人の相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をその者の相続分とするというものです。
ご質問のケース(父が死亡。相続人は子二人のみ)で見ると、相続時の財産8000万円+生前贈与額2000万円=1億円を相続財産とみなします。
そうすると、一応の相続分は、1億円×1/2=5000万円ずつとなります。
兄は既に特別受益として2000万円を受領していますので、兄の実際の相続分は、5000万円-2000万円=3000万円となります。あなたの相続分は5000万円となります。

私は妻とともに亡父と同居し、ほぼ無償で長年稼業を手伝ってきました。父の遺産は1億円です。このような場合でも兄とは遺産を等分に分けないと行けないのですか。

「寄与分」を考慮することができれば、相続分は修正できます。
民法には、相続人間の不平等を避けるため、相続分を修正する制度が設けられています。寄与分に関する規定もその一つです。
共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がいる場合には、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から寄与分を控除したものを相続財産とみなした上、当該相続人の相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とするというものです。
寄与分の額は相続人間の協議で決定しますが、協議が整わない場合には、家庭裁判所が定めることになります。
ご質問のケース(父が死亡。相続人に私(弟)、妻、兄)で見ると、仮に寄与分が2000万円と仮定すると、
相続時の財産1億円-寄与分2000万円=8000万円
そうすると、一応の相続分は、
妻 8000万円×1/2=4000万円
兄 8000万円×1/4=2000万円
弟 8000万円×1/4=2000万円
となります。
弟(相談者)は寄与分2000万円がありますので、弟の実際の相続分は、2000万円+2000万円=4000万円となります。妻は4000万円、兄は2000万円となります。

遺産分割の際、不動産の評価はどのようにすれば良いですか。また、いつの時点の評価額となりますか。

遺産の評価方法は、原則として「時価」によることになります。
不動産の「時価」について当事者間に争いがあるような場合には、不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法があります。
なお、不動産には、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、公示価格、都道府県の基準値標準価格等があります。これらは時価を直ちに示すものではありませんが、当事者が不動産の時価(評価額)について合意しているのであれば、これらを基準に分割の方法について話し合うのも一方法です。
遺産分割の際の評価時期については、相続開始時とする考え方と遺産分割時とする考え方がありますが、後者の方法が一般的となっています。他方、特別受益や寄与分がある場合の計算については、相続開始日を基準とするのが一般です。

遺言とは異なる遺産分割協議をすることはできますか。

遺言が存在する場合であっても、相続人全員(遺言により相続人以外への遺贈がある場合には受遺者も含む)の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることは可能と考えられています。
但し、遺言執行者がいる場合にもかかわらず、遺言に反して相続財産を処分した場合にはその行為は無効となるとの判例もあります。
したがって、遺言執行者が存在する場合には、遺言執行者の関与・同意のもとで遺産分割協議を行う等の手配が必要となります。

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6 遺留分

父死亡後に公正証書遺言が見つかり、すべての遺産を兄に相続させると記載されていました。相続人は私と兄のみです。何か手段はありませんか。

遺言の結果、自らの遺留分を侵害している場合には、遺留分減殺請求をすることができます。
遺留分とは、法定相続人に法定相続分の一部を保障するものです。遺留分の相続財産に対する割合は、直系尊属のみが相続人の場合には3分の1、それ以外の場合には2分の1となります(兄弟姉妹には遺留分はありません。)。
ご質問のケースですと、あなたの遺留分は、1/2(法定相続分)×1/2(遺留分の割合)=1/4となります。
遺留分減殺請求は、その旨の意思表示を行えばよく、訴訟により行うことまでは要しませんが、後々の証明のためには内容証明郵便により行っておくのが安全です。
この遺留分減殺請求は、「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年間行使しないときには、時効により消滅してしまいますので(相続開始時から10年間経過したときも同様)、注意が必要です。
減殺請求の順序等は民法で定まっており、減殺請求を行う財産を請求者が任意に選定することはできないと解されています。
遺留分減殺請求を行った後は、話し合いによる解決を目指すことになりますが、話し合いがまとまらない場合には、調停や訴訟による解決を図ることになります。

 
 
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