2025年07月01日更新
本年6月27日、東京拘置所において1名の死刑執行がなされた。2年11か月ぶりの執行であった。
国連総会は、死刑存置国に対し、死刑の廃止を視野に入れたモラトリアム(死刑の執行停止)を求める決議を繰り返し採択しているところ(直近では2024年12月17日)、我が国においても事実上のモラトリアム状態に入ったのではないかとの見方もなされる中での死刑執行であった。
2024年11月13日には、国会議員、研究者、各会有識者、犯罪被害者遺族等の委員により構成された「日本の死刑制度について考える懇話会」が報告書を公表し、同報告書において、委員16名全員の一致で、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」、「具体的な結論を出すまでの間、死刑執行を停止する立法をすることの是非、あるいは執行当局者において死刑の執行を事実上差し控えることの是非についても、これを検討課題とすべきである」等の提言がなされた。それにもかかわらず今般の死刑執行がなされたことは、同提言に真摯に向き合おうとする姿勢が見られないものであり、極めて遺憾である。
死刑制度を法律上又は事実上廃止している国は、国連加盟国の7割を優に超えている。我が国は、国連総会や関連機関から、複数回にわたり死刑廃止に向けた行動を求める決議・勧告を受けているにも関わらず、死刑制度を存置するとともにその執行を継続しており、国際的な潮流を無視し続けている。このことは、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」と宣言する日本国憲法前文の理念をも損なうものと言わざるを得ない。
当会は、2021年3月2日の臨時総会において、「死刑執行の停止及び死刑制度の廃止に向けた取り組みを求める決議」を採択し、その後も死刑執行がなされるたびに会長声明等を発出してきた。
死刑は、国家が人命を奪う究極的な刑罰であり、数々の再審無罪判決が示すような誤判・えん罪の危険性等に鑑みると、取り返しのつかない人権侵害を招くおそれのあるものである。また、本年6月に施行された改正刑法は、拘禁刑を導入し、罪を犯した者の更生を主眼とする刑罰制度を指向しているが、一切の更生の途を断つ死刑は、その方向性に明らかに反している。
それにもかかわらずまた死刑執行がなされたのであり、当会は、改めて国に対し、今般の死刑執行を強く抗議するとともに、全ての死刑の執行を直ちに停止し、死刑制度廃止に向けた具体的な取り組みを進めることを求める。
2025年7月1日
神奈川県弁護士会
会長 畑中 隆爾
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