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会長声明・決議・意見書(2025年度)

生活保護利用者の人権を再び侵害する厚生労働省の対応策の撤回と生活保護利用者に対する全面的な補償措置の早期実現を求める会長声明

2026年02月27日更新

最高裁判所第三小法廷は、2025年6月27日、2013年から2015年にかけて厚生労働大臣により行われた生活扶助基準の大幅な引下げ改定の違法性を認め、保護費減額処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。

厚生労働省は、2025年11月21日、本判決を受けて、次の内容の対応策(以下「本対応策」という。)を公表した。


第一に、生活保護の生活扶助基準が低所得世帯の消費実態と乖離している部分に関する調整(いわゆる「ゆがみ調整」。かかる調整は本判決でも違法とされていない。)については、再実施する。

第二に、物価の下落のみを理由として生活扶助基準を引き下げる調整(いわゆる「デフレ調整」。かかる調整は本判決で違法とされた。)に代えて、低所得者の消費実態との比較により新たに-2.49%の水準調整を行う。

第三に、訴訟の原告になった者についてのみ、新たな水準調整による減額分を填補する特別給付を行う。


まず、最高裁が保護費減額処分を取り消したことにより、原告らには改定前基準による保護費の給付請求権が具体的に生じているが、それにもかかわらず再び減額改定を行うことは、原告らの具体的請求権の事後的な不利益変更であり、生存権(憲法25条1項)に由来する財産権(憲法29条1項)を侵害するものと言える。

また、改めて減額改定を行うことは、本判決の効力を無視するものである。特に、この新たな水準調整は、訴訟の終盤において、国側がデフレ調整を正当化する根拠として主張したものの、本判決が採用しなかった基準である。そのような基準による減額は、紛争の蒸し返しそのものであり、判決による紛争の一回的解決の要請に反する。

さらに、原告らに対してのみ特別給付をすることは、同じく減額の不利益を受けた生活保護利用者らとの関係で差を設けることになり、法の下の平等(憲法14条)や無差別平等原則(生活保護法2条)に抵触し、到底許されることではない。

このような本対応策は、司法軽視も甚だしいものであり、この国の三権分立及び法の支配を揺るがしかねない問題をはらんでいる。また、高齢者世帯と重度の障害・傷病者世帯が8割を占め、弱い立場におかれている生活保護利用者の人権を再び踏みにじる仕打ちであって、断じて容認できない。

よって、当会は、国及び厚生労働省に対し、本対応策を速やかに撤回し、生活保護利用者に対する全面的な補償措置を内実とする対策を早期に実現することを強く求める。


2026年2月26日

神奈川県弁護士会

会長 畑中 隆爾

 
 
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