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会長声明・決議・意見書(2025年度)

神奈川県警察第二交通機動隊による実況見分調書等への虚偽記載を強く非難するとともに、中立的な第三者機関により、不適正な捜査資料が作成された原因及び再発防止策について検証・公表することを求める会長声明

2026年03月26日更新

本年2月20日、神奈川県警察(以下「神奈川県警」という。)は、同第二交通機動隊に在籍していた警部補ら計7名が、令和4年から令和6年にわたり、速度超過や車間距離不保持の取締りの際、実際の現認状況と異なる状況を交通反則切符に記載したり、現場に臨場していないにもかかわらずあたかも実施したかのように装って虚偽の実況見分調書等を作成したりするという不正行為(以下「本件不正行為」という。)を繰り返していたこと、本件不正行為をした者のうち7名を虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで書類送検したことを公表した。

神奈川県警によると、実況見分調書が不適正に作成された事案の是正は52件あり、また、不適正な違反取消の是正との合計対象件数は2716件となり、既納付の反則金3457万円余りが返還される見込みとされている。

交通反則通告制度では、反則金が納付された場合には当該事案につき公訴が提起されず、納付されない場合には刑事手続に移行する(道路交通法第128条、第130条)。その前提として、反則者の反則行為にかかる事実が正確に記載された反則切符が交付されることが不可欠である。本件不正行為は、交通反則通告制度の信用性を著しく損ねるものである。

また、捜査機関が作成する実況見分調書等は、「真正に作成されたものであること」が証明された場合には、例外的に証拠能力が認められることとなる(刑事訴訟法第321条3項)。実況見分調書等は、その記載が事実に基づく正確な記載であることを前提として、証拠能力が認められるものである。しかし、本件不正行為はその前提を根底から覆す証拠の偽造である。かかる虚偽調書に基づく有罪判決は再審事由に該当する(刑事訴訟法第435条1号)。虚偽調書の作成は、憲法の保障する適正手続(憲法第31条)を妨げる行為であって、到底許されない。

本件不正行為は、交通反則通告制度から刑事手続に至るまで、制度全体の適正を支える捜査書類の信用性を根底から揺るがすものであり、神奈川県警が作成した捜査書類の信用性を失わせ、刑事司法における適正手続を害する重大な不祥事であり、当会はこれを強く非難する。

更に、神奈川県警によると、本件不正行為は、令和6年8月に交通反則切符の交付を受けた者からの相談を端緒にドライブレコーダー映像の確認によって初めて発覚したとするものである。令和4年3月頃の不正行為から2年半余りにわたり、組織内では誰も不正行為を発見・制止できなかったことは、組織としての監督機能・自浄作用が全く機能していないことを示している。神奈川県警は事実経緯の調査と再発防止策を公表したが、そこで明らかにされているのは、「何が行われていたか」に留まる。不正の発生から小隊全体への波及、そして中隊・機動隊本部レベルの監督機能の不全に至るまでなぜそのような事態が2年半にわたって続いていたのかという構造的原因は何ら解明されておらず、自浄作用が機能しなかった組織が自らその原因を客観的に解明することには、構造的な限界がある。他の隊員らは、主導した巡査部長が実況見分に立ち会わなかったため不適正な調書を作成せざるを得なかったと供述するとともに、現場に臨場せずに実況見分調書を作成しても部内で不正が気づかれなかったことから、常態化するようになったとも供述している。本件不正行為を個人の逸脱として矮小化することは許されない。

神奈川県警は、再発防止策として巡回指導官チームの設置や相談窓口の整備等を公表した。また、警察庁は、「適正な交通違反取締りの確保のための取組の強化について(通達)」により、同種事案の絶無を期することを求めている。

しかし、神奈川県警において長期にわたり組織ぐるみの不正が看過されてきたという事実は、単に適正な交通違反取締りの確保という問題に留まるものではない。本件では、捜査機関の監督・自浄作用が機能していなかったことを示しており、組織内部に構造的な問題が存在する以上、神奈川県警による内部調査・内部的な再発防止策のみで本件不正行為が生じた真の原因を解明することには自ずと限界がある。

したがって、当会は、捜査機関から独立した中立性のある第三者機関により、不適正な捜査資料が作成された原因及び再発防止策について検証・公表することを強く求める。

2026年3月26日

神奈川県弁護士会

会長 畑中 隆爾

 
 
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