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会長声明・決議・意見書(2026年度)

最低賃金の大幅な引き上げ及び中小企業への十分な支援策を求める会長声明

2026年06月18日更新

  当会は、神奈川地方最低賃金審議会に対し、最低賃金の大幅な引き上げを答申するよう求めるとともに、国に対し、中小企業への十分な支援策を講じるよう求める。

 

  1.  最低賃金制度は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする(最低賃金法1条)。
     労働市場は人手不足・売り手市場が続いているが、事業者間の競争による賃金の上昇は十分でなく、影響率(現在の賃金額が、引き上げ後の最低賃金額を下回る労働者の割合)が3年連続で20%を超える状況である。
     消費者物価指数(総合)が4年連続で前年比3%程度上昇するなどの近年の物価上昇の中にあっては、最低賃金制度により賃金の底上げを図っていくことは特に重要である。
  2.  神奈川県の地域別最低賃金は、令和7年10月4日改正により1時間1225円となった。
     直近の改正では、消費者物価指数(総合)の上昇率を上回る割合で最低賃金の引き上げがなされているが、これは低所得世帯の生活の改善を意味しない。近年の物価上昇においては、消費者物価指数(食料)は、令和2(2020)年を100とすると、令和8(2026)年3月分では128.7で、28.7%も値上がりするなど、低所得世帯においても支出が避けられない生活必需品の価格が最低賃金の引き上げ幅を優に上回るペースで高騰しているからである。
     家計調査(二人以上の世帯)を見ても、エンゲル係数(支出に占める食費の割合)は上昇傾向にあり、低所得世帯にあっては33.0%(令和7年)と支出の約3分の1を食費に充てざるを得ない状況である。すなわち、最低賃金を引き上げても、食費などの生活必需品がそれ以上に値上がりしているため、低所得世帯の生活はより厳しくなっているというのが実情なのである。
  3.  憲法25条1項は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」としての生存権を保障しているところ、最低賃金法は地域別最低賃金を定める際に考慮を要する労働者の生計費について、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」ことを求めている(9条3項)。
     近年の物価上昇に見合った生活保護基準の引き上げがなされていない点はさておき、最低賃金だとフルタイムで働いても生活保護基準を下回ってしまう例が少なくない。
    例えば、川崎市内で中学生の子2人を養育するひとり親世帯であれば、生活保護費は月平均約31万円となる。
    他方、1時間1225円の最低賃金額で、労働基準法の労働時間規制の上限である1か月あたり173.8時間働いた場合の賃金は月21万2905円、社会保険料や税を差し引いたいわゆる手取額は月17万3758円であり、子2人分の児童手当、児童扶養手当、就学援助を考慮しても28万円に満たない。
      このように最低賃金と生活保護の逆転現象は未だ解消されていない。
  4.  一方で、最低賃金額の大幅な引上げは、中小企業の経営に影響を与える可能性が大きいことから、抜本的な中小企業支援策を併せて実行することが必要である。もとより中小企業の経営基盤は決して盤石なものではなく、今後、更に最低賃金額を引き上げていくに当たっては、独占禁止法や中小受託取引適正化法をこれまで以上に積極的に運用し、中小企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保され、人件費等の経費の増加が適正に取引価格に転嫁されるようにすべきである。
      また、従来の業務改善助成金に加えて、社会保険料の事業主負担分の減免などを実現することも不可欠であり、そのためには、税と社会保障による所得再分配機能を強化するよう、担税力に応じた税制の再構築を行うべきである。
      弁護士会としても、中小企業に対し、賃上げに際して申請することができる業務改善助成金の利用を周知・助言することを通じて、中小企業、労働者ともに安定した経済発展に向けて尽力していく所存である。
      こうした取り組みを通して、最低賃金額の引き上げが、労働者全体の賃上げにも繋がり、経済の好循環にも資するものとなる。
  5.  政府は、2025年6月に石破内閣が閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる「骨太の方針」)において、「2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」という目標を掲げ、この間、新たに発足した高市内閣も、「これまでの内閣以上に事業者が継続的に賃上げできる環境整備を徹底したい」と述べていることからすると、政府は引き続きこの目標を堅持すべきである。
  6.  以上のとおり、神奈川県弁護士会は、神奈川地方最低賃金審議会に対し、最低賃金の大幅な引き上げを答申するよう求めるとともに、国に対し、中小企業への十分な支援策を講じるよう求める。

以上

2026年6月17日

神奈川県弁護士会

会長 三浦  修

 

 
 
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