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会長声明・決議・意見書(2026年度)

精神医療審査会合議体の委員構成に関する意見書

2026年07月01日更新

精神医療審査会合議体の委員構成に関する意見書

 

2026年6月25日

神奈川県弁護士会

会長  三 浦  修

 

第1 意見の趣旨

  1.  精神医療審査会合議体の委員の構成について、「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」を2名とし、「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者」および「法律に関し学識経験を有する者」を各1名以上合計3名とするよう求める。
  2.  精神医療審査会合議体の委員のうち「法律に関し学識経験を有する者」は、弁護士を1名以上とするよう求める。

 

第2 意見の理由

  1.  県内の精神医療審査会の委員構成の現状
     精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)においては、精神医療審査会は5人の委員で構成する合議体であり、合議体を構成する委員は、同法14条2項の各号により、「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」を2人以上、「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者」を1人以上、「法律に関し学識経験を有する者」を1人以上とすることとされている。
     すなわち、精神医療審査会合議体の委員のうち4人については、同法14条2項の各号が掲げる者の員数指定があるが、残りの1人については員数指定がないことから、同法14条2項の各号に掲げられている者であれば、どの者を委員としてもよいはずである。ところが、県内の全ての精神医療審査会合議体において(神奈川県、横浜市、川崎市および相模原市の精神医療審査会)、法律上員数指定のない1名の委員につき「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」が任命されていることから、「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」が3人、「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者」および「法律に関し学識経験を有する者」が各1人という、「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」が過半数を超える委員構成となっている。
     また、横浜市および相模原市の精神医療審査会合議体では、法律に関し学識経験を有する者として検察官は任命されていないが、神奈川県および川崎市の精神医療審査会合議体では、検察官が各1名ずつ任命されている。
  2.  精神医療審査会の役割からみたあるべき委員構成
     (1)意見の趣旨1について
     精神医療審査会は、措置入院、医療保護入院といった強制入院についての入院継続の適否や、入院中の患者から退院や処遇改善の請求があった場合にその審査をする機関であるが、入院が患者本人の意思によらないものであることや行動の制限等を行わなければならない場合があるという精神医療の特殊性をふまえて、人権に配慮したより適切な医療を提供するという医療的視点と患者の人権を最大限尊重するという法的観点のいずれからも審査を行うことが肝要である。
     とりわけ、近年の統計資料(OECD Health Data等)においても、精神病床数が総数でも人口比でもOECD加盟国中で最大であり、人口比での入院患者数は他国の数倍におよび、入院期間の平均が約277日とOECD加盟国の平均約29日をはるかに上回る日本の精神医療においては、入院患者数の抑制と入院期間の短期化が課題となっていることから、精神医療審査会合議体の委員構成も、かかる課題の解消という観点から見直されるべきである。令和4年の精神保健福祉法の改正において、入院期間と更新の手続が法定化され、入院患者の地域移行を促進するための措置が拡充されたのも、上記課題の解消に向けた取り組みの一環であるといえる。
     前述のとおり、県内全ての精神医療審査会合議体において、現在「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」が過半数を超える委員構成となっているが、そのような委員構成では、人権擁護の観点よりも医療の提供という側面が重視されがちとなり、入院患者数の抑制と入院期間の短期化という日本の精神医療の課題の解消に向けた役割を十分に果たすことができないのではないかと思われる。そのため、意見の趣旨1のとおり、県内の精神医療審査会合議体の委員の構成は「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」を2名とし、その他の者を3名とするよう求めるものである。
     令和5年に日弁連の全国精神保健担当者会議で実施したアンケート調査でも、回答が得られた234の精神医療審査会合議体のうち32の合議体が「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」を2名とし、その他の者を3名とする合議体であった。委員のうち過半数を「精神障害者の医療に関し学識経験を有する者」以外の者とする合議体は今後増えていくものと思われる。したがって、わが県においても、精神医療審査会合議体の委員の過半数を精神障害者の医療に関し学識経験を有する者以外の者とする取り組みを行うことは、精神障害者の人権擁護の充実を図るうえで、大きな意義を有するものであるといえることから、ぜひとも前向きに進められるべきである。
     (2)意見の趣旨2について
     平成12年3月28日障第209号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第十二条に規定する精神医療審査会について」では、精神医療審査会合議体の委員のうち「法律に関し学識経験を有する者」の任命に当たっては、公平な判断を期待しえる立場にある者を充てるとの観点に立って、司法関係者の意見を十分調整した上、裁判官の職にある者、検察官の職にある者、弁護士、五年以上大学 (学校教育法による大学であって大学院の付置されているものに限る。)の法律学の教授又は助教授である者のうちから行うこととされたいと述べられている。
     上記通知に列挙されている者のうち検察官は、精神保健福祉法24条の措置入院の通報や医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)の審判の申立てなど、精神病患者の強制入院に関する職務を担っている。そのため、その職務の性質上、患者側との利益相反が生じかねず、精神医療審査会合議体における入院継続の適否や処遇改善の審査を、独立かつ中立の立場から行えるのか懸念がある。他方で、弁護士は、日頃から被拘禁者や社会的弱者の人権擁護活動、個別事案における適正手続の保障に直接携わっており、当事者の視点に立った厳格な法的審査を行う専門性を有している。
     入院患者数の抑制と入院期間の短期化という日本の精神医療の課題を解消し、また人権擁護の最後の砦として精神医療審査会が機能するためには、こうした「人権の擁護」と「適正手続の確保」を不断の使命とする弁護士の知見が不可欠である。現在、横浜市および相模原市の精神医療審査会合議体の委員に検察官が任命されておらず、弁護士のみが選任されていることは、「公平な判断を期待しえる立場にある者」を充てるべきという、平成12年3月28日障第209号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第十二条に規定する精神医療審査会について」の趣旨に沿うものである。当会が令和6年3月26日付で神奈川県知事に発出した「神奈川県精神医療審査会の在り方に関する申入書」において、神奈川県精神医療審査会合議体の委員のうち「法律に関し学識経験を有する者」は弁護士を任命するよう要望したのも、同じ理由によるものである。
     したがって、意見の趣旨2のとおり、県内の精神医療審査会合議体の委員のうち「法律に関し学識経験を有する者」は、弁護士を1名以上とするよう求めるものである。
 

以上

 
 
本文ここまで。