横浜弁護士会新聞

2006年10月号  −2− 目次

紛争解決センターでの解決事例報告(3)1回で終わらせる
会員 山本 安志
 事案の概要は、相手方3名(未成年)からの暴行によって、申立人(未成年)が肋骨を折るなどの傷害を受け、1か月半の通院治療をしたというものであった。申立人は、(1)通院慰謝料50万円(2)アルバイトの休業損害13万円(3)後遺症慰謝料50万円の合計113万円余りの請求をし、うち1人と30万円で示談。残りの2人に賠償を求め、申立をしてきた。
 平成18年4月に、第1回あっせん仲裁期日が開かれ、申立人代理人と相手方双方親権者が出席をしてくれた。相手方親権者が出席してくれないと手続きは進行しないので、一安心。
 早速、申立人代理人から事情を聞き、損害額の根拠が確実なものと不確実なものを選別し、相当額を算出してみた。申立人代理人は弁護士なので、その点の確認は早くできた。
 続いて、相手方親権者らにいくらだったら払えるかを聞いた。双方の合計額は、申立人代理人と検討した相当額より低い金額であったが、申立人代理人は、あっせんがあれば、まとめたいとの意向が強く感じられたので、これはチャンスと思い、相手方の提示額で申立人代理人を説得したところ、納得が得られた。この話がまとまるまで1時間くらいであった。
 その後、直ちに、パソコンで和解条項を作成し、和解契約書に差し込んでもらい、30分後には和解契約書が作成された。
 1回で終了できた珍しいケースかと思うが、主として、申立人の理解と譲歩がないと相手方の説得は難しいと感じた。また、当事者同士ではなかなかまとまらないものをあっせん仲裁に持ち込むのも一方法かと思う。

合同就職説明会 会員の一層の参加を
 第60期司法修習生に対する合同就職説明会が8月5日当会会館で開催された。当日は全国から160名の修習生が参加したが、参加事務所は21にとどまった。ちなみに昨年は修習生135名、事務所数26で行われていた。
 本年は昨年(9月3日実施)より早い時期に実施したためか、申込みの段階では約200名もの応募があり、一同に集まっての開始式は無理であるため行わなかった。
 会議室や相談室を事務所に割り当て、企業の就職説明会のように修習生には希望する事務所ブースを直接訪問してもらった。数人ずつブースに入ってもらい、10分ごとに放送を流して交替を促したが、ずっと長い列ができていた。
 中華街で行われた懇親会にも修習生136名、弁護士23名が参加し、会場は身動きができないほどだった。
 就職希望の修習生に比較して参加事務所が少なすぎて説明会としては成功とは言い難いものに終わってしまった。当会の説明会には一人事務所の参加がほとんどない。誰かの紹介で採りたい、いい人がいれば採りたいが就職説明会に出てまで採用したくないという会員が多いように思われる。
 しかし、来年は旧試験と新試験の修習終了が重なるため、修習修了者は2500人、そのうち弁護士になるのは、今年の1200人より1000名多い2200名と見込まれている。来年の就職難は今年の比ではない。
 来年は一人事務所の会員も含め是非とも多数の会員が説明会に参加し修習生に就職の機会を提供して頂きたい。
(副会長 弓場正善)

専門実務研究会報告(4)不動産法研究会 実務研究結果報告
分筆登記における全筆求積と土地取引
[1] 土地の分筆の際、分筆後の残地についても求積測量が要求されるようになった。つまり、これまで求積測量が要求されなかった分筆の残地についても、求積が要求され、登記簿と実測に差異が生じる場合には特別な事情がある場合を除き、地積更正が必要になったので、土地取引には十分ご注意頂きたい。
[2] 全筆求積は平成17年に施行された不動産登記法・不動産登記事務取扱手続準則(新準則)により定められたものである。これまで、改正後も周知期間として新制度の厳格な適用はされてこなかったが、横浜地方法務局では、平成18年2月より新準則による全筆求積・地積更正を徹底するようになっている。東京法務局では、すでに平成17年10月から全筆求積・地積更正が要求されている。
[3] 具体的には、分筆をするため測量した元地番の土地につき許容誤差以上の差が発見された場合には、まず地積更正の登記が要求され、地積更正をしたうえでないと、分筆登記が許されない(不動産登記事務取扱手続準則124条)。
[4] 地積更正が必要な許容誤差は、土地の地域区分・地積等で異なる。
 地積更正が必要か否かの判断基準は、国土調査法施行令別表5の精度区分を使用する。
 たとえば、横浜市内の市街地で、200uの土地を100uずつに分筆する場合、上記精度区分の甲2の区分を使用するときは、元番である公簿200u土地につき、実測との間に、わずかプラス・マイナス1u24u以上の誤差があると、まず地積更正をしたうえで分筆登記を申請することが必要となる。このように国土調査法施行令別表5の精度区分はかなり厳しいので、実務上はかなりの頻度で地積更正の必要性が生じる。
[5] 全筆求積・地積更正が必要となると、土地取引に、次のような影響が出る。特に、土地売買の契約書を作成するときは、左記(1)(2)に配慮しなければならない。
(1) 測量・地積更正登記・分筆登記の手続きに長期の期間が必要になる。
(2) 隣接地との境界確認が必要となる。
 注意が必要なのは、地積更正のため、隣接地所有者の境界承認印の取得が必要になることである。ただ、近時は、以前のように境界承認に隣接地主の実印・印鑑証明書までは要求されることがなくなったが、迅速な分筆手続きには境界承諾書の作成に工夫が必要である。この隣接地主の境界承認が取得できないため、土地取引ができなくなってしまう危険がある。
(3) 道路査定・水路査定の申請等が余計にかかることもある。
(4) 境界承認の取得交渉費用・残地求積の測量代・更正登記費用が余計にかかる。
(5) 地積更正で面積が増えた元番の地主の固定資産税・都市計画税が増えてしまう。
[6] 隣接地との境界確認ができない場合、以下の対処を考えなければならない。
(1) 従来の境界確定訴訟を裁判所に提起する。
(2) 筆界特定制度により筆界を確定する。
[7] 弁護士が、分筆後の土地を売買する契約書を作成・監修するときは、上記改正に対応した処置を講ずる必要がある。
(1) 分筆完了後、売買契約を締結するのが一番安全確実であろう。
(2)
分筆前に売買契約を締結するのであれば、分筆手続きが予定以上に遅れた場合、または、境界確定訴訟が必要になり、売買契約の履行が不可能となった場合のリスク負担と処理条項を特約しておく必要がある。
 以上は、11月24日以降、当研究会が取り上げる予定の「不動産雑学講座」の1テーマであり、特約の具体的内容については研究会で検討する予定である。
(会員 立川 正雄)

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