横浜弁護士会新聞

2011年7月号  −3− 目次

有益で実務的な情報を 清算所得課税廃止と破産手続に関する公開研修会
 倒産法研究会は、平成12年、バブル経済崩壊後の倒産事件の急増という当時の社会情勢を背景に設立された専門実務研究会である。実務経験豊富な当会会員を講師とした研修会を中心に、時機に応じたテーマについて外部講師を招いた研修会も開催している。
 平成22年度の税制改正に伴い、同年10月1日以降に破産手続開始決定を受けた法人の課税方式が、これまでの清算所得課税(財産課税方式)から活動中の法人と同じく所得に応じて課税される所得課税(損益課税方式)に変更された。そこで当研究会では、5月10日、「清算所得課税の廃止が破産手続に与える影響」と題して研修会を開催した。当初予定していた3月の研修会を震災の影響で急遽5月に変更しての開催だったが、弁護士会館5階大会議室が満員になるほどの盛況振りであった。
 講師は、今回の税制改正に関与された長屋憲一弁護士と植木康彦税理士で、新たな課税制度について税務と破産実務の両面から検討が加えられた。
 研修会では、財産課税方式と損益課税方式の基本的な説明から始まり、損益課税方式に移行するにあたり破産実務の実態と整合性を保つために苦心した改正議論の裏話的な解説もあり、改正内容について非常に分かりやすく説明がなされた。さらには税務申告書の具体的な記載方法についてまで解説は及び、まさにかゆいところまで手の届く大変実務的な研修会となった。
 倒産法研究会では、今後も、有益な情報を提供して、会員のスキルアップに努めていきたい。
(倒産法研究会 幹事 村松 剛)

常議員会のいま 理解を深める機会に
会員 澄川 圭(60期)
 60期の澄川です。私が当会の会員になってから4年弱が経ちます。委員会等にもそれなりに顔を出してきたつもりですが、弁護士会全体のこととなると、ほんの断片程度しか分かりません。そこで、自らが所属する弁護士会について理解を深める貴重な機会だと考えて、常議員に立候補しました。また、私は「激増する若手」の中の1人でありますので、ベテランの先生方と考え方にギャップがあれば、折を見て伝えていきたいと考えています
 さて、今回、「常議員会のいま」ということで「常議員会の議論等の中で感じられていること等について」とのお題をいただきましたが、これに正直に答えると、「よく分からん」ということになってしまいます。
 原稿執筆時点で今年度の常議員会は3回開催されており、私も毎回出席はしています。しかし、まだ議論にはほとんどついていけません。また、私は人見知りで押しの弱い人間ですので、ふと疑問が湧いた際にも、質問をしようとタイミングを図っていたら諸先輩方に先を越されてしまうこともあります。
 今後はせめて、「よく分からん」から「少しは分かる」程度に成長するために、事前配布された資料にはきちんと目を通した上で、毎回常議員会に出席するつもりです。また、少しずつでも諸先輩方を見習って、積極的に発言していければとも思います。
 なお、同じ支部出身の安藤副会長、某委員会でお世話になった伊東副会長に対しては、いつか必ず厳しい質問を浴びせかけて御恩返しをしたいと考えています。

新こちら記者クラブ 業妨トラブルに現場は
 「法治国家の根幹を揺るがす極めて悪質な犯行」。ことし2月、横浜市の法律事務所で男性弁護士が殺害された事件で、殺人罪などに問われた被告に一審判決が言い渡された。
 裁判所は、事件の背景には弁護士が担当していた離婚事案をめぐるトラブルがあったと認定した上で、被告の行為を「暴力によって自らの主張を押し通そうとしたもの」と厳しく非難して、検察側の求刑通りに無期懲役を言い渡した。
 この事件の後にも、秋田県で業務をめぐるトラブルから弁護士が殺害されるなど、弁護士が被害者となる事件は跡を絶たない。
 相次ぐトラブルを受けて、入口を常時施錠したり、ホームページに掲載していた顔写真を削除したりして、防犯対策をとる事務所が増えている。しかしその一方で、市民に開かれた場所でありたいとして、防犯に踏み切れない事務所も少なくない。セキュリティー対策と、市民に対する開かれた門戸というジレンマは、法律事務所の共通の悩みの種となっているようだ。
 昨今、市民と法律家との垣根は、より一層低くなったと言われる。それだけに、依頼人の感情が弁護士へと向かう場面は、今後ますます増えてくるのかもしれない。トラブル防止の有効な手立てが見出せない中、横浜地裁の判決は、決して暴力や妨害には屈しないという法曹界の決意を代弁しているように聞こえた。
(NHK横浜放送局 廣岡 千宇)

子どもが語る“シェルターと私”に参加して
子どもの権利委員会委員 山根 大輔
 5月21日、NPO法人子どもセンター「てんぽ」主催で、「子どもが語る“シェルターと私”」と題するシンポジウムが開催された。
 「てんぽ」は、虐待等の理由により帰る場所を失った子ども達のためのシェルターである。
 シンポジウムは(1)「てんぽ」の活動報告(2)「てんぽ」利用経験のある子どもの話を収録したDVDの上映(3)パネルディスカッションという三部構成で開かれた。
 パネルディスカッションでは、子どもの支援や今後のシェルターのあり方等について議論が交わされた。その中で、シェルターの利用期間に制限があるため(原則として2か月程度)、早すぎる自立に苦しむ子ども達が多いという現状について問題提起がなされていた。
 また、私が強い印象を受けたのは、子ども達の生の言葉である。「てんぽ」入所を決意した理由を聞かれ、声を詰まらせ、涙を流していた子どもの声にならない言葉が強く心に残った。
 その他、参加者を対象としたアンケート結果では、子ども達が「てんぽでは、みんなでご飯を一緒に食べることが一番楽しかった」と話していることに衝撃を受けた方が多かったようだ。
 私が「子担」(子ども担当弁護士)に登録しているのは、山田洋次監督の映画の影響によるところが大きい。勝手な解釈かもしれないが、山田監督は、映画「男はつらいよ」、「学校」シリーズ等の中で、絶えず「幸せな家庭」像を追求しているように思われる。「てんぽ」を利用せざるを得ない子ども達は、家族みんなでご飯を一緒に食べるということすらままならないことが多く、「幸せな家庭」を心から欲している。
 「幸せな家庭」に育ててもらった一人の大人として、子ども達のほんの一助になれれば。今回のシンポジウムを機にそのような思いが一層強くなった。

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