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会長声明・決議・意見書(2000年度)

少年法改正に関する会長声明

2000年05月11日更新

本日、衆議院本会議において、少年法「改正」法案の趣旨説明が行なわれ、法務委員会に付託のうえ、審議が開始された。

横浜弁護士会は、昨年6月10日、「少年司法における事実認定手続きの一層の適正化を図るため」として上程された本法案につき、極めて広範な事件について検察官の関与を認めるとともに、観護措置期間を現行の最長4週間から12週間に延長し、さらに検察官に抗告権を認めるなど少年審判を変質させる重大な問題点を抱えていることを、会長声明で指摘した。

少年審判では、刑事裁判と異なり、裁判官はあらかじめすべての捜査記録に目を通した上で審理に臨んでおり、少年が非行事実を争った場合に、検察官が審判に関与して少年の主張を弾劾することを認めることは、少年にとって著しく不公平であるばかりか、保護主義の理念を大きく歪めるものである。さらに、少年は、大人に比べて誘導にのりやすく虚偽の自白をしがちであることを考えるならば、現行職権主義構造のもとで検察官の関与を認めることは、むしろ事実認定を誤らせるおそれが高いと言わざるを得ない。

また、観護措置期間の延長は、身体拘束の長期化によって、少年の心身により大きな悪影響を与え、退学や失職等の回復困難な不利益を与える可能性を高めるばかりでなく、少年がこれらの不利益をさけたいとの思いから、あるいは不安定な心理状態のもとで、虚偽の自白をしてしまうことにもなりかねず、冤罪の危険性をさらに増大させるものである。

さらに、検察官に抗告権を与えることは、少年を今までよりはるかに長期間にわたって不安定な立場におくことになり、それによって成長発達過程にある少年の受ける不利益は計り知れないものである。

また、少年事件被害者の権利保障の面においても、「改正」案は、わずかに、不十分な被害者通知制度を導入するのみであり、本年3月に発表された日本弁護士連合会の「少年事件被害者の少年事件手続への関与等に関する規定」案と比べても全く不十分なものといわざるを得ない。

当会は、今回の「改正」法案にあらためて強く反対するとともに、国会においては、少年の権利と適正手続の保障および被害者の権利保障の観点から、冷静かつ慎重な審議が尽くされるよう強く求めるものである。


2000年(平成12年)5月11日
横浜弁護士会
会長   永井 嵓朗

 
 
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