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会長声明・決議・意見書(2003年度)

裁判員制度に関する声明

2004年01月14日更新

  1. 政府は、現在、司法制度改革推進本部において、通常国会への裁判員制度に関する法案提出に向けた最後の準備を行っている。他方、自由民主党及び公明党は両党間で与党プロジェクトチームを結成し、裁判員制度の最終的な制度設計の調整を行っており、多くの国民はその結果に重大な関心を持って注視している。
  2. 昨年10月28日発表された同推進本部「裁判員制度・刑事検討会」の井上正仁座長試案は、合議体について裁判官3人、裁判員4人を基本とし、現行の刑事裁判の枠組みを崩さず、裁判員を付加する程度のものに留め、国民参加型の刑事司法制度を新設するという理念には、ほど遠いものであった。また、自由民主党が昨年12月16日発表した取りまとめ案も、裁判官3人、裁判員4人程度としており、現行刑事裁判の延長として裁判員制度を位置づけているに過ぎない。
  3. 裁判員制度は、本来、司法制度改革審議会意見書にあるように、「統治主体・権利主体である国民が、司法の運営に主体的・有意的に参加する」ことを目指し、「裁判内容に国民の健全な社会常識が反映されるようになることによって、国民の司 法に対する理解・支持が深まり、司法はより強固な国民的基盤を得ることができるようになる」ものであって、裁判員の主体的・実質的な関与が可能となる制度を作ることが肝要である。そのためには、裁判員の数はその構成に偏りを生ぜずしかも職業的裁判官の前で萎縮することなく活発な議論ができるような数とし、訴訟手続も裁判員として参加する市民にとって分かりやすいものとし、裁判官の数は裁判員が評議において裁判官の意見に引きずられることなく自己の意見を率直に述べられるように最小限とする制度を創設すべきである。

    当会はかような観点から、下記の点に留意した制度設計を要望する。 

    (1)裁判の合議体の構成としては、裁判官は2人以下とし、裁判員は6人以上とする。

    (2)裁判員に分かりやすい証拠調べとするために、調書ではなく証人尋問を中心とし、自白の任意性・信用性など供述調書の作成過程が問題となった場合に備えて、事前に取調状況をすべて録画・録音するという捜査の可視化を実現する。

    (3)裁判員の裁判手続への関与を短期間で済むように、検察官手持ち証拠の全面的証拠開示を図り、被疑者・被告人の身柄拘束を短期間とし保釈を原則的に認容して弁護活動の準備が十全になるような勾留制度に改める。

    (4)裁判員を終えた者の守秘義務は、評議における個人の意見、職務上知り得た他人の秘密に限定し、罰則は課さないものとする。
  4. 当会は、この裁判員制度が今次の司法制度改革の最重要課題であると認識し、刑事司法手続きにおける国民参加型の制度として十分に機能するようなものとして実現するように、その全力を傾注する所存である。


平成16(2004)年1月14日
横浜弁護士会
会長  箕山 洋二

 
 
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