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会長声明・決議・意見書(2007年度)

死刑執行に関する会長声明

2008年02月13日更新

2月1日,東京拘置所,大阪拘置所及び福岡拘置所において各1名,合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。平成18年12月25日に4名,平成19年4月27日に3名,同年8月23日に3名,同年12月7日に3名の死刑確定者に対して死刑が執行されており,今回の死刑執行と合わせて過去1年余りの間に16名に対し死刑が執行されたものである。

当会は,日本弁護士連合会の「死刑制度問題に関する提言」(2002年11月)を受けて,死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう,これまで再三にわたって政府に対し要請してきたが,今回,前回の死刑執行から僅か2か月足らずの間に,またしても死刑の執行がなされたことは誠に遺憾である。

死刑については,死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効),1997年4月以降毎年,国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い,その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに,死刑の完全な廃止を視野に入れ,死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行っている。このような状況の下で,死刑廃止国は着実に増加し,1990年当時の死刑存置国96か国,死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)に対し,2007年12月24日現在,死刑存置国62か国,死刑廃止国135か国と,死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。

また,同年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては,我が国の死刑制度の問題が端的に示された上で,死刑の執行を速やかに停止するべきことなどが勧告されており,さらに同年12月18日には,国連総会本会議において,全ての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が賛成多数で採択された。

我が国では,4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し,死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっている。しかし,このような誤判を生じるに至った制度上,運用上の問題点については,何ら抜本的な改善が図られておらず,誤まった死刑の危険性は依然存在する。しかも,死刑と無期の量刑について,裁判所によって判断の分かれる事例が相次いでおり,死刑についての明確な判断基準が存在しないことも明らかである。

また,我が国においては,近年重罰化の傾向が顕著であり,2007年に全国の裁判所で死刑判決が言い渡された被告人は47人に上り,1980年以降最多である。このような重罰化傾向の中で,2009年から実施される裁判員裁判においては,国民から選ばれた裁判員が,死刑を含む量刑判断に参加することとなるが,裁判員が,死刑制度の実情を十分に認識・理解しないまま,量刑判断に臨まなければならないとすれば,裁判員に過大な負担を課すだけでなく,適正な刑事裁判の実現も期待できない。それゆえ,まさに今日,死刑制度の運用と実態に関する正確な情報を基に,死刑制度の存廃について国民的議論を尽くすことは極めて重要である。

当会は,改めて政府に対し,死刑確定者の処遇の現状を含め死刑制度に関する情報を広く公開することを要請するとともに,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし,死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間,死刑の執行を停止するよう,重ねて強く要請するものである。


2008(平成20)年2月7日

横浜弁護士会
会長  山本 一行

 
 
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