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会長声明・決議・意見書(2008年度)

消費者庁に関する会長声明 2008年6月2日

2008年06月02日更新

消費者が主役の「消費者庁」の実現を求める会長声明

本年4月23日、福田康夫内閣総理大臣は、政府が設置した消費者行政推進会議において、「消費者を主役とする『政府の舵取り役』としての消費者庁(仮称)を来年度から発足させる」との意向を明らかにし、消費者に身近な問題を取り扱う法律は消費者庁に移管することや、地方消費者行政の強化を打ち出した。

横浜弁護士会は、この点を高く評価するものであるが、消費者主役の実効性ある制度のために、以下のとおり、さらなる制度の充実発展を図る必要がある。

神奈川県内に事務所を有するすべての弁護士が所属する法定団体である横浜弁護士会は、これまでも無料消費者相談窓口を常設し、神奈川県内の消費生活センターと連携し、大規模被害が発生した場合には説明会を行い当会会員が弁護団を結成するなど、これまでも神奈川県内で発生する多くの消費者被害の救済に取り組んできた。

その経験からも、消費者の権利擁護の理念の下で、消費者を被害から守るためには、まずその被害の相談ができる窓口を充実させて、被害発生を早期に発見し、その情報を一元的に集約し、事件の解決や被害の拡大の防止などのための迅速な対応がなされることが不可欠と考える。

ところが、内閣府の調査によれば、全国の相談件数は増えているにもかかわらず、地方自治体の消費者行政予算は、年々削減されており、十分な相談体制を取れないなどの弊害が生じている。ことに、神奈川県においては平成8年度消費者行政予算は2億6003万円であったものが、それ以降減少を続け、平成19年度には5199万円まで激減し、従前県が行っていた直接の相談業務の多くを廃止して各市町村に移管するなど、全国第2位の人口を擁する大県であるにもかかわらず、全国で最も大幅な行政予算及び人員の削減を行っている。その結果、神奈川県内の市町村によっては人員・予算の関係で週1回しか相談窓口を設けられず、そのため消費者が適切な相談を受けられないなど、地方消費者行政の大幅な後退が生じている。このような中でたとえ、消費者庁が設立されたとしても、消費者保護のための人的・物的体制を十分に確保しなければ、神奈川の近年の地方消費者行政をみれば明らかなように、機能しなくなってしまう。

他方、近年の輸入冷凍餃子への毒物混入、こんにゃくゼリーによる窒息死事件、一連の食品偽装事件、英会話教室NOVAの事件など、一地域にとどまらない広範な被害が多く発生している。神奈川県横浜市に本社を持つココ山岡事件も、全国各地で大量の被害者を出した。このように、地方単位での消費者生活相談のレベルだけでは問題の解決は十分ではなくなってきているのも事実である。そのためにも、全国的で一元的な情報の収集と調査分析を行い、消費者主役の視点で早期に解決ないし防止する十分な権限を有した消費者行政や体制を整えることも急務である。

従って、当会は、消費者の権利擁護の立場に立ち、消費者が主役の消費者行政を行う消費者庁を実現するために、次の制度の創設充実を強く求める。

 

  1. 消費者の苦情相談が、消費生活窓口で適切に助言・あっせん等により解決救済されるよう、地方自治体の相談窓口を充実・拡大させ、そのために必要な人的・物的制度の構築ならびにそれを裏付ける十分な予算を、国の責任で確保すること。
  2. 消費者庁が、消費者政策についての企画・立案を行い、消費者被害が多発する分野についての、関係法の所轄を消費者庁に移管し、そして必要があれば、関係省庁への勧告のみならず、事業者に対する直接の指導監督権限を行使できるようにすること。
  3. 消費者庁は、地方の消費相談窓口、消費者、事業者、公益通報者からの被害関連情報を一元的に集約し、調査・分析・公表する権限と原因究明機関を持つこと。
  4. 消費者庁は、消費者被害救済に実績のある民間人を新組織人事に積極的に登用し、消費者団体に新組織に対する調査・勧告申立権限を付与するなど、新組織の運営に消費者の参加と監視を行うことのできるようにする制度を導入すること。


当会は、今後も、消費者被害防止と救済のために実効性のある消費者庁及び地方消費者行政の実現に向けて、組織のあり方について今後も提言を行うなど、全力で取り組む所存である。


2008年5月9日
横浜弁護士会

会長 武井 共夫

 
 
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