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会長声明・決議・意見書(2009年度)

「高校無償化」制度について,全ての外国人学校を対象にすることを求める会長声明

2010年03月17日更新

現在国会で審議されている「高校無償化」法案の適用において,下記の理由により,朝鮮高級学校を含む全ての外国人学校を対象とする制度となることを求める。


 

  1. 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」案(いわゆる「高校無償化」法案)が,今国会に上程され,昨日衆議院で可決され,参議院に回付されている。
    高校無償化法案は,日本が批准している社会権規約13条2項Cの定める高等教育への無償教育の漸進的な導入を実現するものであり,大いに歓迎すべき法案である。

    ところが,新聞報道等によると,政府内では政治的配慮から,朝鮮学校を無償化の対象から排除することも検討されているとのことである。
  2. しかしながら,そもそも,高校無償化法案第2条1項には,制度の対象となる「高等学校等」に「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」各種学校が含まれると規定されている。そして朝鮮高級学校は,それぞれ都道府県知事から各種学校としての認可を受け,確立されたカリキュラムにより安定した教育が長年にわたって実施されており,実際に,国公立大学を含む日本全国のほぼすべての大学が,朝鮮高級学校の卒業生に対し,「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」として大学受験資格を認定していることなどからすれば,朝鮮高級学校が上記「高等学校等」に該当しないとする理由はない。
  3. そうであれば,日本の私立学校や他の外国人学校と区別して,朝鮮高級学校のみを高校無償化制度の対象から除外することは,合理的理由のない差別であって,憲法14条の平等原則等に反し,教育機会の平等と母国語による民族教育を受ける権利を保障した子どもの権利条約28条,30条等に反すると言わざるをえない。そればかりか,国連の人種差別撤廃委員会が「子どもの教育に人種差別を持ち込むものだ」と懸念を表明したように,人種差別撤廃条約が禁止する「人種的憎悪及び人種差別の正当化・助長」(4条)につながりかねないものであり,許されるものではない。
  4. 現在日本には10校の朝鮮高級学校があり,そのうちの1校が神奈川県にある。この高校が高校無償化から排除されることは,県内における人権侵害であり,当会としても,高校無償化法案の適用において,朝鮮高級学校が不当に排除されることのないよう,朝鮮高級学校を含む全ての外国人学校を対象とする制度となることを強く求めるものである。



2010(平成22)年3月17日
横浜弁護士会
会長  岡部 光平

 
 
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