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会長声明・決議・意見書(2013年度)

死刑執行に関する会長談話

2013年09月26日更新

本年9月12日,東京拘置所において,1名の死刑確定者に対する死刑が執行された。

谷垣法務大臣が就任して3回目の死刑執行であり,今年になってすでに6名の死刑が執行されたことになる。

日本弁護士連合会は,2011年10月に開催された人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的論議を呼びかける宣言」を採択した。また,本年2月12日には,谷垣法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し,死刑制度に関する検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し,死刑制度とその運用に関する情報を公開すること、そのような議論が尽くされるまですべての死刑の執行を停止することを求めている。この間,どのような検討が為されたのか,大いに疑問があると言わざるを得ない。

死刑執行については,今なお多くの情報が非公開とされており,今回の死刑執行についても,133名の死刑確定者の中で何故この1名の死刑確定者について執行されたのかなど明らかにされておらず,秘密主義との批判も免れ得ない。今回死刑執行された死刑確定者については,殺害被害者数は1名とされており,裁判においても一審判決は無期懲役であったが,検察官控訴により控訴審において死刑判決があり,上告棄却により死刑が確定したものであった。裁判官によって死刑を選択することが分かれた事案であり,慎重な検討が必要であったにもかかわらず,法務省においてどのような検討がなされたのか明らかにされていない。

昨年12月20日には,国連総会において,死刑廃止を視野に執行を停止するよう求める決議が過去最多の111か国による賛成多数で採択された。また,昨年10月の国連人権理事会作業部会による日本の人権状況に対する第2回目の普遍的定期審査(UPR)において,日本の死刑制度及びその運用の変更を求めて勧告が為されるなど、死刑廃止は国際的な趨勢である。

我が国においては,四つの死刑確定事件(免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について,再審無罪判決が確定している。死刑事件ではないが,布川事件,足利事件,東電OL殺人事件等での再審無罪判決が確定している。刑事裁判では誤判の可能性が常にあるのであり,この可能性と死刑制度が抱える諸問題を様々な角度から洗い出して広く社会が問題点を共有し改革の方向性を探るべきである。

当会は,改めて,今回の死刑執行に抗議するとともに,死刑制度の存廃を含む十分な国民的議論を尽くすまでの一定期間,死刑の執行を停止するよう,重ねて強く要請するものである。

 

2013(平成25)年9月26日
横浜弁護士会
会長  仁平 信哉

 
 
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