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会長声明・決議・意見書(2015年度)

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆるカジノ法案)の再度の廃案を求める会長声明

2015年07月09日更新

  1. 平成27年4月28日,超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連,通称・カジノ議連)に所属する議員によって,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆるカジノ法案)が,第189回通常国会に提出された。同法案は,現行刑法上,賭博罪として禁止されているカジノを合法化し,民間賭博を解禁しようとするもので,先の国会で廃案となった法案にわずかな修正を加え,議員立法として再提出されたものである。
  2. 当会は,平成26年10月9日付の意見書にて,第1にわが国には既に成人人口の約4.8パーセントもの病的ギャンブラーがおり,米国・香港・韓国と比較しても著しく高い水準となっているとの調査報告がある中,他のギャンブルと比較してもギャンブル依存に陥る危険が高いと言われているスロットマシーンやテーブルゲームを解禁しようとするものであること,第2に仮にカジノ営業を行う事業主体から暴力団等の反社会勢力を排除するための制度を整備したとしても,暴力団等による事業主体に対する出資や従業員の送り込み,事業主体からの委託先・下請への参入等による間接的な資金獲得は可能であり,カジノが暴力団等の資金源となるおそれがあること,第3に同法案の目的である経済効果についても,短期間のプラス面のみが喧伝され,病的ギャンブラーが生み出されること等による生産性の喪失や社会コストの増加については何ら検討されていないことを理由に,先の国会に提出されたカジノ法案の廃案を求めたところである。
  3. しかるに,先の国会で廃案になって以降,カジノ法案で解禁しようとしているスロットマシーンやテーブルゲームの危険性に関する調査・研究や,病的ギャンブラーが生み出されること等による社会的コストの検証は,全く行われていない。このような調査・研究や検証等を行わず,民間企業による賭博事業の合法化というきわめて重要な事柄を安易に立法してしまうことは,ギャンブル依存の問題をさらに深刻化させ,社会的コストを増大させるほか,暴力団等の介入や治安の悪化等を招きかねず,危険であると言わざるを得ない。一旦,カジノが合法化され,民間業者が参入すれば,仮に赤字になった場合,次々に射幸性の高いギャンブルを導入して売上を確保することになりかねず,さらに深刻なギャンブル依存症が蔓延するという負の循環にも陥りかねない。
  4. なお,今回の法案では,日本に居住する者の入場について,悪影響防止の観点から必要な措置を講ずるとの項目が付け加えられているが,暴力団等の反社会的勢力を助長しかねない等の問題点は何ら解決されておらず,また,外国人旅客相手であれば利益のために悪影響が及んでよいとも考えられない。現実的に,日本に居住する者のみ入場規制を行うことが可能かどうかも,極めて疑問である。加えて,仮にこのような入場規制を行ったとしても,多数の公営ギャンブルが経営上の理由で廃止されている中,カジノの経営が困難になれば,カジノを存続させるため入場規制が緩和・廃止され,暴力団等の反社会的勢力が直接的・間接的に関与してくるであろうことは容易に予想できることである。
  5. 現在,行うべきことは,病的ギャンブラーやギャンブル依存からの脱却に関する調査・研究や,カジノを導入した場合,暴力団等の反社会勢力の資金源となることやカジノ事業者がマネー・ロンダリングに利用される危険性がある等のマイナス面の検証であり,まず立法ありきという姿勢はきわめて危険である。
    よって,当会は,今国会に提出されたカジノ法案を再度廃案にするよう,強く求めるものである。
  6. 2015(平成27)年7月8日

    横浜弁護士会     

     会長 竹森 裕子 

     

 
 
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