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会長声明・決議・意見書(2015年度)

横浜地方裁判所相模原支部に合議制導入を求める決議

2015年08月14日更新

横浜地方裁判所相模原支部に合議制を導入するよう求める。

提案理由

  1. 横浜地方裁判所相模原支部は、平成6年4月に新設された支部であるが、開庁以来、合議事件の取扱をしていない。
    しかし、同支部の管内である相模原市と座間市の人口は現在約85万人に達している。また、同支部の平成25年の新受件数は、民事第一審通常訴訟事件が557件、刑事第一審事件が338件である。人口、事件数ともに、同支部より少ない本庁が多数あるほか、合議事件を取り扱っている他の支部(63庁)と比較しても、相模原支部より事件数の少ない支部が多数ある。しかも、相模原支部には、現在、裁判官が6名配属され、合議事件を審理できる法廷もあるし、同支部管内の弁護士も平成27年6月末時点で71名に達するなど、合議事件を取り扱う態勢は十分に整っている。
    また、相模原市は、人口増加を続ける中、平成22年4月に政令指定都市に移行した。政令指定都市は全国に20市あるが、政令指定都市に設置されている支部の中で合議事件を取り扱っていないのは相模原支部だけである。
  2. 相模原市は地形が東西に長く広がっているほか、相模原支部から横浜地方裁判所本庁までの移動時間は公共交通機関を利用して約1時間10分を要する。このような相模原支部で合議事件を取り扱わないことから、同支部に提訴した事件が横浜地方裁判所本庁に回付され、移動時間の関係で期日が入りにくくなり、訴訟の進行が遅れたとか、複雑な事件のため、同支部を避けて本庁に提訴せざるを得なかったとか、勾留決定に対する準抗告を申し立てたが、決定が出るまで時間がかかった等、同支部管内の弁護士から、合議事件を取り扱わないことにより弊害が生じた事例がいくつも報告されている。
  3. 最高裁判所は、裁判の迅速化に関する法律第8条第1項に基づき、これまで2年ごとに6回にわたり「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」を公表してきた。その中で、最高裁判所は、民事訴訟が複雑困難化する中で、複数の裁判官が多様な観点から検討を加えて判断することの意義は大きく、合議体による審理を活用すべき要請は強まっており、主任裁判官が中心となって集中的にマンパワーを注いで必要な調査や整理を行うことで、中心的な争点を早期かつ的確に把握しやすくなるとして、合議体による審理の充実は迅速化の要請にもかなうとしている(平成27年7月「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(概要)」28頁)。このような合議体による審理のメリットは、本庁のみならず、支部にも妥当する。合議体による審理のメリットを受けるために、遠く離れた横浜地方裁判所本庁まで行かなければならない状態が今後も続くとしたら、それは、すでに現われている弊害の固定化であり、上記報告書の趣旨に逆行するものである。
  4. そもそも、市民には「裁判を受ける権利」が保障されている。居住する地域によって受けうる司法サービスに差異があってはならない。「裁判を受ける権利」を実質的かつ平等に保障するためには、裁判所支部の人的・物的基盤整備と機能の強化が必要不可欠である。このような観点からすれば、中小規模の他県の本庁に匹敵する人口や事件数を有する相模原支部において、管内の市民が上記のような弊害を甘受すべきいわれはない。
  5. 現在、最高裁判所と日本弁護士連合会との間で、民事司法改革に関する協議が進められており、その中で、日本弁護士連合会から、他の諸課題ととともに、相模原支部を含めた合議事件取扱支部の拡大が提案されているところである。これまで、相模原市や座間市では、市議会が合議制の実施を求める決議をし、相模原市長が合議制の実施を求める要望書を横浜地方裁判所に提出するなど、弁護士会のみならず、市民が相模原支部における合議事件の取扱を求めてきた。最高裁判所においては、これらの市民の声に真摯に耳を傾け、上記の協議の中で、相模原支部に合議制を導入するよう強く求めるものである。
  6. 2015(平成27)年8月13日

    横浜弁護士会常議員会

     

 
 
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