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会長声明・決議・意見書(2015年度)

普天間飛行場代替施設建設事業の見直しを求める会長声明

2016年02月12日更新

  1. 現在、沖縄県の辺野古崎・大浦湾沖にて、自然環境及び生活環境に重大な影響が危惧される普天間飛行場代替施設建設事業(以下「本件事業」という。)が、沖縄県民や地元地方自治体の意向を無視して進められている。ここには以下のような重大な法的な問題点があり、県内に多くの米軍基地を抱える神奈川県にとっても共通の課題であって、当会としても看過することができない問題である。
  2. 沖縄県知事は、2015年10月13日、前知事が行った本件事業に係る公有水面埋立ての承認(以下「本件承認」という。)を取り消した。これに対し、沖縄防衛局は同月14日、国土交通大臣に対し、行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止の申立てを行い、これに対して国土交通大臣が同月27日執行停止決定をし、この決定を受けた沖縄防衛局は同月29日、中断していたボーリング調査等を再開した。また、国はこれと並行して代執行手続を行うことを閣議決定し、国土交通大臣は11月17日、沖縄県知事を被告として、埋立承認取消処分の取消を求めて福岡高裁那覇支部に提訴した。他方、沖縄県知事は12月25日、国土交通大臣が埋立承認取消の効力を停止したのは違法だとして、那覇地方裁判所に抗告訴訟を提起した。さらに沖縄県知事は2月1日、上記執行停止決定に対してした審査の申し出を不適法として却下した国地方係争処理委員会の判断を不服とし、国土交通大臣に対して当該執行停止決定の取消を求めて福岡高裁那覇支部に提訴し、現在計3件の訴訟事件が係属するに至っている。
  3. このように、現在、本件事業の実施をめぐって国と沖縄県との対立が深刻化する中で、国は本件埋立工事推進の方針を貫こうとしている。
    しかし、その工事を再開するためになされた、上記の沖縄防衛局による審査請求と執行停止の申立て及びこれに対する国土交通大臣の執行停止決定については、その適法性に重大な疑問がある。すなわち、この申立ては、国の機関である沖縄防衛局が、一般私人と同様の立場に立って、同じ国の機関である国土交通大臣に対して行ったものであり、国民の権利利益の救済を目的とする行政不服審査制度を濫用するものであって、法の目的からして本来許されないはずである。この点、多数の行政法研究者有志も、「じつに不公正であり、法治国家に悖るもの」と強く非難する声明を発表している。ちなみに、本年4月1日に施行される新しい行政不服審査法7条2項では、国の機関等がその固有の資格で名宛人となる処分は審査請求の対象から明示的に適用除外とされており、その趣旨は本件にも該当すると解される。
    したがって、上記執行停止決定は、手続的に不適法であると言わざるをえず、これに基づいて再開された工事は停止されるべきものである。
  4. また、そもそも、沖縄県知事が本件承認を取り消したのは、公有水面埋立法4条1項1号(「国土利用上適正且合理的ナルコト」)及び2号(「環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」)の要件を満たしていないという理由による。この県知事の判断は、2015年7月16日に「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」が、本件承認について、同法の上記要件などを欠き、法律的な瑕疵がある、との報告を出したことを踏まえたものである。
    沖縄県には、国土の0.6パーセントの土地に米軍専用基地の74パーセント近くが集中しており、埋立ての必要性についても疑問があるなど、本件承認が「国土利用上適正且合理的」といいうるかは大いに疑問である。
    また埋立てにより、絶滅危惧種であるジュゴンをはじめとする多くの貴重な生物や生態系などの自然環境が破壊される可能性も高く、本件承認は「環境保全ニ十分配慮」しているともいいがたい(2013年11月21日付け日本弁護士連合会「普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書」参照)。
    かかる点に鑑みれば、沖縄県知事の本件承認取消の判断は十分合理的である。
  5. 本件事業に係る新たな基地建設に反対という沖縄県民の強い民意は、近時の沖縄県における自治体首長選挙や国政選挙、そして多数の住民の反対運動等によって明らかにされている。新たな米軍基地を建設、提供するということは、それ自体極めて重大なことがらであるばかりか、その地域の自然環境、生活環境、自治体行政等の在り方を根底から変えてしまうほど多大な影響を及ぼすものであり、その決定及び実施に当たっては、地元住民及び地方自治体の意思が最大限重視されなければならず、これを無視し、踏みにじって強行されるべきものではない。そのことは、憲法92条が定める団体自治、住民自治をその内容とする地方自治の本旨はもとより、2000年に施行された地方分権一括法によって国と地方は対等であることが確認されていること等に照らしても、明らかである。
    自然環境は、いったん破壊されてしまえばもはや取り返しがつかず、また、基地騒音その他の基地被害も多大なものになるおそれがある。そして損なわれた地方自治もまた、回復が困難である。
  6. 以上の米軍基地問題をめぐる環境保全と地方自治の問題は、ひとり沖縄県だけにとどまらず、全国各自治体に共通の問題である。とりわけ有数の基地県である神奈川県にとって、米軍基地の提供やその変更に関して、地元住民や自治体の意思が尊重されるかどうかは、切実な問題である。
    よって、当会は、国に対し、沖縄県知事の判断及び沖縄県民の民意を尊重し、本件事業の実施について、改めて根本的に見直すことを求めるものである。
  7.  

    2016(平成28)年2月10日

    横浜弁護士会     

     会長 竹森 裕子 

     

 
 
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