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会長声明・決議・意見書(2019年度)

横浜市のIR誘致発表に関する会長声明

2019年09月12日更新

  1. 声明の趣旨
    1. 当弁護士会は、横浜市のIR誘致に反対し、誘致撤回を求める。
    2. 横浜市がIRの認定申請をするのであれば、あらかじめ、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響について、十分に調査、評価したうえで、その調査、評価の結果を住民に提供し、それを前提に住民の合意形成を図らなければならない。その際には、直接、住民の民意を問うべきである。
  2. 声明の理由
    1. 横浜市のIR誘致発表
      横浜市の林文子市長は、2019年8月22日、横浜市に特定複合観光施設(IR)を誘致することを発表した。
      林市長は、今後、横浜市の生産年齢人口が減少し、経済活力の低下や厳しい財政状況が見込まれること、IR誘致により、地域経済の振興、増収効果等、多くの経済的効果が見込まれること、カジノに起因する問題(ギャンブル依存症や治安悪化など)に関する取組みや対策強化について環境が整ったことなどを理由とした。
    2. 誘致撤回を求める理由
      しかしながら、横浜市のIR誘致発表については、以下のとおり、多くの問題がある。
      1. 特定複合観光施設区域整備法自体に問題があること
        特定複合観光施設区域整備法(いわゆる「カジノ解禁実施法」)には、反社会的勢力がカジノ運営に関与し資金源を得る可能性があること、マネー・ロンダリングのおそれを排除できないこと、ギャンブル依存症が生み出される等により生産性の喪失や社会的コストの増加することなどの問題点について十分な検討がなされていない。
        加えて、カジノ施設では賭博が行われるところ、我が国において賭博行為は刑法上の犯罪として禁止されている。この点、宝くじや競馬競輪等の公営ギャンブルについては依存症等の問題を払拭できないまでも一定の公益性が認められるのに対し、カジノ施設のような民間賭博についてはこれを認める合理的理由はなく、賭博罪の違法性を阻却するに足りる事由があるとは言えない。
        このようにカジノ解禁実施法自体が多くの問題を含んだ法律であり、同法に基づくIR誘致はすべきでない。
        当会も、カジノ解禁実施法が法案として2018年4月27日国会に提出された際に、各問題点を指摘し、廃案を求める会長声明を発表している。
      2. 横浜市民の多数の反対意見があること
        次に、横浜市が2018年5月に「横浜市中期4か年計画2018~2021(素案)」を公表し、意見募集を行った。その結果、IRに関して提出された433件の意見のうち407件がIRに否定的な意見であった。
        また、神奈川新聞が2017年10月に神奈川県内の有権者に電話世論調査を実施したところ、カジノ施設を含むIRについて反対が68.0%、賛成が24.5%であり、反対が圧倒的多数であった。
        このように、横浜市民の多数は、カジノ施設を含むIR誘致に反対であり、横浜市はこのような市民の意思を尊重するべきである。
      3. 横浜市の調査が不十分であること
        横浜市は、2019年6月に「IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり検討調査(その4)報告書」について横浜市内4か所で市民説明会を行った。
        この調査報告書では、横浜市の観光客の伸び率が他都市よりも低いこと、超高齢社会の進展から生産年齢人口の減少により、今後、個人市民税の減収が見込まれることなどから財政見直しが必要であるとしている。そのうえで、IRを誘致することにより、投資見込額(建設費等)及び売上見込額(年間)が数千億円以上、自治体への増収効果が約600億円~約1400億円と経済的なプラス面の説明はしている。
        しかしながら、この報告書では、カジノ施設を含むIRを設置することにより、ギャンブル依存症患者がどの程度増加しその対策費用にいくらかかるのか、IR内での売上については試算しているがIR外の周辺地域(横浜では「みなとみらい地区」、「関内」など)の飲食店等の売上がどの程度減少するのかなどのマイナス面の試算がほとんどなく、横浜市の調査は不十分であると言わざるを得ない。
      4. 林市長は、2017年の市長選挙の際にIR誘致につき選挙で民意を問うていないこと
        林市長は、元々IR誘致に前向きであったが2017年の市長選を前に「白紙の状態」と慎重姿勢に転じ、このときの市長選の争点としておらず、治安の悪化や横浜市の財政に関し、横浜市民に多大な影響を与えるIR誘致について民意を問うていない。
      5. 横浜市における住民合意の形成について
        前述のように、横浜市の調査は、不十分である。横浜市がIR区域の認定申請を行うのであれば、あらかじめ、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響について、十分に調査、評価したうえで、その調査、評価の結果を住民に提供し、直接、住民の意思を問うべきである。
  3. 結語
    以上のとおり、当弁護士会は、横浜市のIR誘致につき、撤回を求めると共に、横浜市が民意にはかることなくカジノ誘致を行うことのないよう、緊急に本会長声明を発する次第である。

以 上


2019年9月11日

神奈川県弁護士会

会長 伊藤 信吾

 
 
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