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会長声明・決議・意見書(2004年度)

みなし弁済規定の撤廃及び制限利率の引き下げを求める会長声明

2005年02月23日更新

平成17年2月23日
横浜弁護士会 会長 高橋理一郎



ここ20年来、多重債務問題は深刻さを増し、個人破産申立件数は平成元年9190人から同4年4万3144人、同10年10万3803人、同15年には24万2357人と増加し、そして同16年は21万1402人(2月8日最高裁判所速報値)と依然として申立件数は高水準にある。消費者、中小零細企業を問わず、多重債務問題の深刻さは相変わらず改善されず、経済的理由による自殺者は平成15年には8897人にのぼっている。

利息制限法は経済的な弱者の立場に置かれた人々を暴利から保護する強行法規であり、その定めを超過する利息は無効と定められているところ、貸金業者は出資法の上限である29.2パーセントを超えた場合にのみ処罰されるため、この刑罰金利未満で利息制限法を超過する利率による貸付(所謂グレーゾーンの貸付)が氾濫している。他方、長期経済的不況を反映して、銀行貸出約定平均金利は数年来2パーセントを切る状態で低迷してきたが、貸金業者はCM広告を大々的に展開し、利息制限法を超過する利率による貸付により銀行を凌駕する高収益を上げ、長者番付に続々と登場している(なお、日本弁護士連合会はサラ金業者のテレビ広告廃止を申入れている)。

ところが、全国企業の経営内容に関する民間の統計資料によれば、黒字企業の平均借入額と黒字企業の平均的利益を前提とすると、黒字企業の平均的利益は、貸出金利が約12パーセントで消失し、年間売上5千万円以下の黒字企業にあっては貸出金利が10パーセント台で企業利益は消失する。現在の利息制限法の制限利率(100万円以上15パーセント)は平均的黒字企業を赤字に転落させる利率より更に高い利率であり、中小零細企業の倒産防止の観点からも現行の高すぎる制限利率の改善を早急に図る必要がある。

また、政府の統計資料によっても、一般の給与所得者の生活は楽ではなく、中でも消費者金融の顧客層は主として銀行や勤務先からの低金利の借入が困難な中小企業従業員であるため、生活を破壊しない返済の限度は限られているにもかかわらず、利息制限法違反の違法な高金利による過剰融資によってサラリーマンの生活が破壊される貸付が蔓延し、200万人にものぼるといわれる多重債務者を産み出している。

一方で倒産、失業、ホームレス、多重債務者、家庭破壊、自殺を産み出しつつ、他方で商工ローンおよび消費者金融業者が、利息制限法違反の利息により違法な高収益を挙げている。このような貸手借手の不均衡な事態を是正し、消費者の生存権の保障と経済および景気の健全な早期回復のために、利息制限法の定める制限利率と刑事処罰の対象となる利率とを一致させ「制限超過利息の支払を一定の厳格な要件のもとに有効とみなす規定(貸金業規制法43条)」を廃止する必要がある。また、消費者の生存権を守るためにも昭和29年のインフレ期に作られたままの高すぎる利息制限法の制限利率(10万円以上100万円未満18パーセント、10万円未満20パーセント)を引き下げる必要がある。この改善は、多重債務者を狙ったヤミ金融跋扈の原因を除去することにもなる。

近時、貸金業業界から金利規制の緩和あるいは撤廃の主張と要請がなされている。当会は貸金業業界のこのような主張は、資金需要者との共存をもたらさないものであるため強く反対するとともに、消費者、中小零細企業等の資金需要者を保護するため、出資法所定の処罰利率を利息制限法所定の利率に一致させて「みなし弁済規定」を撤廃し、重ねて制限利率を引き下げることを求めるものである。


以 上

 
 
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