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会長声明・決議・意見書(2004年度)

共謀罪の制定に反対する会長声明

2005年03月11日更新

「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」に基づき,国内法化を図るものとして,第159回国会に提出され継続審議となっている「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」は,現在開会中の通常国会で審議が予定されており,同法により共謀罪の新設がなされようとしている。


共謀罪は,「団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀」した者は,死刑又は無期若しくは長期10年を越える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪については5年以下の懲役又は禁錮,長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪については2年以下の懲役又は禁錮に処するとするものである。


「共謀」とは、犯罪を共同で遂行しようという意思を合致させる謀議、謀議の結果として成立した合意のことをいう。犯罪は一般的に、犯罪を決意し(意思)、準備に取りかかり(予備)、実行に着手し、結果を発生させて既遂となる。実行行為のない予備は原則として不可罰であり、ましてや外形的行為の認められない意思の段階は処罰しないというのがわが国の刑法の原則である。ところが、法案は,意思の段階にすぎない「共謀」それ自体を処罰の対象とする。まさにそれは「意思」を処罰するものであって,刑法の原則に反するものと言わざるを得ない。


「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」第3条1項は条約の適用範囲として「性質上越境的なものであり,かつ,組織的な犯罪集団が関与するもの」として、対象団体を越境的な組織犯罪集団に限定している。しかるに法案にいう「団体」は国境をまたぐ、犯罪をこととする団体に限られていない。それはきわめて幅広く、政党,NPOなどの市民団体、労働組合、企業等もそこに含まれる。共謀罪規定を根拠にこれらの団体に捜査の網がかけられるおそれなしとはしない。


また、条約は、第5条1項において,締約国が取らなければならない立法措置の要件として「金銭的利益その他物質的な利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のために重大犯罪を行うこと」を求めている。しかしながら,法案の共謀罪は,かかる限定のない規定となっているうえ、死刑、無期を含む長期4年以上の犯罪にその適用が広げられている。その対象犯罪の罪名は550を超えているのである。


横浜弁護士会は,提案されている共謀罪は,刑法の基本原則に反し、その人権保障機能にも反するものであるので,法案が規定する共謀罪を制定することには反対である。


2005年(平成17年)3月11日
横浜弁護士会
会長 高橋 理一郎

 
 
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