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会長声明・決議・意見書(2011年度)

「布川事件」の再審無罪判決に関する会長声明

2011年05月24日更新

本日,水戸地方裁判所土浦支部は,1967(昭和42)年8月に茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件,いわゆる「布川事件」について,桜井昌司,杉山卓男両氏に対し再審無罪判決を言い渡した。

桜井・杉山両氏は,別件逮捕後の取り調べで犯行を自白させられたものの,第一審公判開始以来,一貫して無罪を叫び続けてきたものであり,1978(昭和53)年に無期懲役刑が確定した後も,再審請求を続けてきたもので,両氏とその家族,支援者,弁護団の努力に深く敬意を表する。

本件は,もともと犯行に関する物証は皆無で,目撃証言も「犯行当日請求人両名を布川付近で見た」というあいまいなものでしかなく,両氏に強要して作成された虚偽の自白は矛盾と変遷に満ちていた。

本日の判決においては,かつて確定審において有罪判決の根拠とされた目撃供述が,その供述経過や内容等に照らし,信用性に欠けるものとされた。

また,桜井・杉山両氏の自白には重要事項の全般にわたって不合理な変遷が認められ,客観的事実に照らして不自然な点が多く,捜査官の誘導等により作成された可能性も否定できないため,信用性がなく,かつ,任意性にも疑いが残るとされた。いずれも極めて正当である。

本件において桜井・杉山両氏が虚偽の自白に至ったのは,別件逮捕・勾留を利用した,密室における長期間・長時間の取調べ,代用監獄の弊害といった自白偏重の捜査構造にその原因がある。確定審では自白の一部を録音したテープが自白の信用性の根拠とされていたこと,後に開示された自白テープに編集痕がみられたことは,取調べの全過程を録画する公正な制度が必要であることを明らかにしている。

また,再審請求審になってはじめて開示された検察官手持ち証拠が再審無罪の有力な証拠となったことは,公正な裁判にとって全面証拠開示が不可欠の重要性を持つことを示している。

当会は,検察官がこの判決を真摯に受け止め,控訴することなく,桜井・杉山両氏を強盗殺人犯の汚名から解放することを強く要請する。

現在,検察官による証拠改ざん事件を契機に,検察のあり方が大きく問われ,また,裁判員裁判の実施により刑事司法に対する国民の関心が高まっている。

当会は,本判決を受けて,全面的な証拠開示,代用監獄の廃止,取調べの全過程の録画の実現など刑事司法の改革に全力を挙げることを表明する。


2011(平成23)年5月24日
横浜弁護士会
会長 小島 周一

 
 
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