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会長声明・決議・意見書(2012年度)

司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明

2012年11月15日更新

  1. 本年11月27日から,第66期司法修習が開始され,神奈川県においては,89名の司法修習生が配属される予定になっている。
  2. しかし,第65期司法修習生から修習期間中の給与を支給する給費制が打ち切られ,生活費を貸与する貸与制が実施された。これにより,修習生には,本給だけでなく,それまでに支給されていた交通費や住宅手当も支給されなくなった。
  3. 司法修習生は,修習期間中、修習のみに専念する義務を負っており(裁判所法第67条2項),アルバイトその他の経済活動が禁じられている(司法修習生に関する規則第2条)。したがって,修習専念義務を負う修習生には,収入を得る道はない。
    しかも,従来から,修習生の実務修習地は,希望どおりになるとは限らず,遠方の修習により予想外の家賃・交通費などの出費を余儀なくされる修習生は少なくない。
  4. 当会では,横浜修習の第65期司法修習生に対して,アンケートを行った(回答率89%)。アンケートによれば,経済的な理由から将来に不安をかかえているという声が多く聞かれ,中には,修習中は昼食代を節約したり,衣服の購入にも苦慮している者もいる。さらには,貸与制で収入がないものとされていることから,部屋を借りられない者もいる。今後,司法修習が開始される第66期司法修習においても,同様の事態となることが懸念される。
  5. また,法科大学院を修了した者は,すでに奨学金の返還債務を負っていることも少なくないので,経済的事情により,そもそも,修習生になることを断念したり,修習生になることを躊躇したりすることが考えられる。
  6. 法曹養成制度については,本年7月27日,「裁判所法及び法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律の一部を改正する法律」が可決され,「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から,法曹の要請における司法修習生の修習の位置づけを踏まえつつ,検討が行われるべき」と明記され(同法第1条),法曹養成制度について1年以内に結論を得ることとされた。これを受けて,同年8月21日の閣議決定により法曹養成制度検討会議が設置され,検討会議は,すでに,12回中3回が開かれたが方向性は未だ示されておらず予断を許さない。
  7. 司法修習生の給費制の打ち切りが,広く有為な人材が法曹を目指さなくなったことの原因の一つであることは疑いようもない。まずは,司法試験に合格した者が経済的理由により司法修習を断念することがないようにすることが急務である。司法の担い手である法曹の養成について,本来国が責任を持つべきである。その国が,1年間の修習専念義務を課しながら,司法修習生を全国各地に配属し,費用を支給しないという制度自体,国の責任放棄であり,誤っていると言わざるをえない。

 

そこで,当会は,国及び法曹養成制度検討会議に対し,司法修習生に対する給費制を復活するように求める。

 

以上

2012(平成24)年11月14日
横浜弁護士会
会長 木村 保夫

 
 
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